2-6 坑道掘削の振動を利用して地表から地下を探る

−物理探査法による地下深部の可視化技術−

図2-14 調査位置

図2-14 調査位置

掘削工事の振動を観測するために、地表に並べて設置している受振器の位置を示しています。受振器は、図中の青色実線部に10m間隔で設置しています。

 

図2-15 掘削振動の観測データから作成した反射断面(a)と過去に実施した反射法地震探査による反射断面(b)

図2-15 掘削振動の観測データから作成した反射断面(a)と過去に実施した反射法地震探査による反射断面(b)

(a)の黄色破線及び矢印は、確認できる反射面の位置を示したものです。

高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発として、地下水の流れに影響を与える地質構造を空間的に精度良く把握することは、地質構造モデルを構築する上で重要です。地質構造を調査する手法としては、空中から調査するリモートセンシングや空中物理探査、地上から調査する地上物理探査、地表踏査及びボーリング調査などがありますが、ここでは、地上物理探査の一つである弾性波を利用した調査手法として、坑道掘削工事の振動を利用した地質構造調査技術について紹介します。

現在、瑞浪超深地層研究所では、研究坑道の掘削工事を実施しています。掘削工事では、掘削のための発破やズリ出し,ボーリング掘削などの様々な振動が発生しています。本研究は、これらの振動(弾性波)を利用して、地質構造を調査するというものです。弾性波を利用して地質構造を調査する代表的な手法としては反射法地震探査があります。これは、地上に受振器を並べて設置し、ほぼそれに沿って一定間隔で地上から地下へ人工的な振動を発振して、地下から反射してくる振動を地上で観測して地質構造を把握するという手法です。本研究で紹介する手法は原理はこれと同じで、図2-14に示すように、立坑を中心として地上に放射状に受振器を設置して行います。反射法地震探査と異なる点は、地上の受振点に沿った発振がないということです。したがって、そのままでは、反射法地震探査と等価な結果を得ることはできません。そこで、発破振動に対する観測データから、すべての受振点について、その一つを発振点とし残りを受振点とした場合のデータを計算(相互相関処理)により求めて、反射法地震探査と等価な観測データを作成します。図2-15は、図2-14のNo.4測線とNo.1測線で観測したデータを基に上記の計算を行い、作成した反射断面(a)と過去に実施した既存の反射法地震探査の反射断面(b)を表示したものです。図のように、既存の反射断面で認められる地層境界に対応する反射面が、掘削工事振動を観測したデータから作成した反射断面においても確認することができました(図2-15(a)の黄色破線及び矢印)。以上のことから、このような調査手法により通常の反射法地震探査と同等な地質構造調査が行えることが期待されます。

今回は1回の発破振動を観測データとして利用しましたが、今後は、掘削工事で発生する様々な振動を利用して観測データの質を高めることで、より明瞭な反射断面を得ることができると考えられます。この調査手法は、基本的に受振点が設置できれば良いので、反射法地震探査では発振点の問題などで調査が困難な場所であっても容易に調査を行うことが可能であり、図2-14のように放射状あるいは面的に受振器を設置しておけば調査の三次元化も容易に行えるなどの利点を持っています。


●参考文献
Shiraishi, K., Matsuoka, T. et al., Seismic Interferometric Imaging from a Point Source in the Ground, Journal of Seismic Exploration, vol.15, 2006- 2007, p.323-332.


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