2-8 比抵抗値による地下水水質分布の推定

−地球統計学による信頼度の向上−

図2-18 調査位置及び調査の種類

図2-18 調査位置及び調査の種類

 

図2-19 比抵抗値と地下水の総溶存成分濃度との関係

図2-19 比抵抗値と地下水の総溶存成分濃度との関係

 

図2-20 各調査ステップ毎の三次元物性分布モデルと予測結果の信頼度の変化

図2-20 各調査ステップ毎の三次元物性分布モデルと予測結果の信頼度の変化

(a)各調査段階における水質分布予測結果の変化
(b)各調査段階における推定残差の変化

北海道幌延町で進めている幌延深地層研究計画として、2005年度まで3km×3km程度の調査領域内で地上から地下深部の地質環境を把握するための調査研究を実施し、現在は地下に坑道を掘り進みながら、地上からの調査研究で立てた予測を確認し、調査手法や解析評価手法の妥当性の検討などを行っています。ここでは、この地下施設の建設に伴う周辺地質環境の変化を把握・評価する手法に関する研究について紹介します。

地上からの調査研究では深度500〜1,000m程度までの深層ボーリング調査のほか、図2-18に示すように広範囲の地質環境に関する情報を得るための物理探査と呼ばれる調査を行いました。物理探査は、岩盤に振動や電気を人工的に伝え、その伝わり具合によって地質環境に関する情報を得る調査です。特に、地上からの調査研究で適用した物理探査手法のうち、岩盤中の電気抵抗(見かけ比抵抗)の分布を調べる手法は、ヘリコプターを使った広範囲・低解像度のものから、深層ボーリング孔における検層といった狭範囲・高解像度のものまでデータを取得していました。また、調査領域内では、図2-19に示すように地下水中に含まれる溶存成分濃度と見かけ比抵抗値の間に高い相関性が認められています。

本研究では、これらのデータに地球統計学と呼ばれる岩盤などの物性分布の推定に用いられる統計手法を適用することで、調査のスケールや解像度が異なる一次元的・二次元的な比抵抗分布データから三次元の空間分布モデルを構築しました。更に、地上からの調査で行った各調査ステップごとにデータセットを構築し、情報量の増加によって構築したモデルの精度の検証とその信頼度の向上の度合いを定量的に検討しました。

この手法の特徴は、地球統計学による解析を行うことで客観的に構築したモデルの精度や不確実性を評価できることにあります。図2-20に調査ステップごとの三次元比抵抗分布モデルから推定した地下水水質分布の変化と、推定値と実測値の差(推定残差)の変化を示します。図2-20(a)より、三次元水質分布モデルは、調査ステップごとに調査データが得られた付近においてモデルの更新が図られること、それに応じて周辺の不確実性が低減していく様子が分かります。また、図2-20(b)より、調査ステップごとに、予測された水質分布の推定誤差は0に近くなるものの、水質分布のばらつきの範囲は狭まらないことが分かります。これは、単純にデータ量を増やすだけでは、モデルの不確実性の幅を大幅に改善することは難しく、調査対象領域の地質環境(地質構造や水質分布など)を十分考慮した上で、調査データを取得する位置を決める必要があることを示していると考えられます。

今後は、地上からの調査研究の段階で構築した三次元比抵抗モデルとそれに基づく物性分布の予測結果を踏まえ、地下施設建設中に地上から地下施設建設深度(深度500m)までの範囲をカバーできる電気探査を定期的に繰り返し、地下施設建設による周辺地質環境への影響度合いとその範囲を把握する予定です。また、この調査で構築する技術は、実際の処分場建設・操業・埋め戻しといった各段階において地上から地下深部までの地質環境の変化やその回復状況を定量的な把握・評価に適用できるものと考えられます。


●参考文献
本多眞, 松井裕哉ほか, 地盤統計学的手法を用いた地質環境モデル構築手法に関する研究(共同研究), JAEA-Research 2007-028, 2007, 91p.


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