3-8 核融合炉への安定した燃料供給を目指す材料

−核融合発電炉用先進トリチウム増殖材料の開発−

図3-20 酸化物添加Li2TiO3の焼結密度の酸化物添加量依存性

図3-20 酸化物添加LiTiOの焼結密度の酸化物添加量依存性

LiTiOに酸化物(ZrO,ScO及びCaO)を添加することにより、ペレットの焼結密度の増加を抑制できることが分かりました。LiTiOが高温・長時間保持された際の、結晶粒成長によるトリチウムの放出への影響は、粒成長抑制材として酸化物を添加することにより解決できる見通しを得ました。

 

図3-21 酸化物添加Li2TiO3<のH2雰囲気中における酸素欠損量

図3-21 酸化物添加LiTiOのH雰囲気中における酸素欠損量

核融合炉の燃料となるトリチウムは水素(H)ガスを用いて回収するため、LiTiOはH雰囲気に置かれます。H雰囲気中ではLiTiO中のTiが還元され、酸素(O)が欠損するという結晶構造の変化を生じてしまいますが、CaOを添加した場合では無添加よりO欠損量が減少し、還元されにくい材料となりました。

核融合炉は、重水素(D)とトリチウム(T)を燃料とするDT核融合反応を起こしますが、Tは自然界には存在しません。このため核融合炉ブランケットに充てんしたリチウム(Li)に中性子を照射しTを人工的に生産する必要があります。このLi増殖材としては、トリチウム放出特性に優れ、低放射化材料でもあるチタン酸リチウム(LiTiO)が最有力と考えられています。一方、核融合炉ではLiTiOは長時間、高温状態で中性子に照射されるため、結晶粒の成長や、Tを回収する際の水素(H)ガスで材料が還元することにより、Tの放出量が減少する問題があります。このため結晶粒成長(焼結密度の増加)を抑制しかつHガスにより還元されにくいLiTiOの開発が必要でした。本研究は、この増殖材の実現に向けて、酸化物添加による特性改善を調べたものです。

添加する酸化物としては、2〜4価の金属酸化物であるCaO,ZrO及びScOの3種類に関して調査しました。試料は、単軸加圧成型後1,000℃にて焼成することにより、ペレットとしました(図3-20)。ペレット焼結密度の酸化物添加量への依存性を調べた結果、微量の酸化物添加においても無添加のペレットより焼結密度が下がる結果が得られました(図3-20)。すなわち結晶粒成長が抑制され、結晶粒間に十分な隙間が保持できることを発見しました。

次に、これらの酸化物を添加したLiTiOのH雰囲気中での還元特性を調べるため、熱天秤を用いてH還元時の酸素(O)欠損量を測定しました。酸化物添加により焼結密度が下がりすぎるとT放出特性に影響が生じるため、酸化物添加量は極力少量、かつ焼結密度が83〜86%T.Dを満たす図3-20の斜線で示す範囲を最適添加量として、本測定に使用しました。Hを導入して試料が還元されると、外見は白色から薄灰色または薄茶色に変色するとともに、O欠陥による重量減少が観察されました。還元後に酸化を行い、各試料の1molあたりのO欠損量を算出した結果が図3-21です。酸素欠損量はCaO添加<無添加<ZrO添加<ScO添加の順となり、CaOを添加する場合が最も還元されにくいことが分かりました。この理由としては、試料合成時にCaTiOが生成され、LiTiO中のTiの量が少なくなることで、還元時に起きるTiの価数変化(4価から3価)の影響が低減し、還元が抑制されると考えています。

今回の研究により、LiTiOにCaOを添加することで、結晶粒成長の抑制の可能性だけでなく、Hにより還元されにくい特性を持つことが分かり、高温においても安定したT放出量を維持可能な核融合炉のトリチウム増殖材料の研究開発が大きく前進しました。


●参考文献
Hoshino, T. et al., Non-Stoichiometry of Li2TiO3 under hydrogen atmosphere condition, Fusion Engineering and Design, vols.75-79, 2005, p.939-943.


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