4-13 見えにくい構造も高性能X線でくっきり観察

−テラワットレーザーによる高輝度,高コントラストX線の発生−

図4-30 本レーザープラズマX線発生装置の模式図

図4-30 本レーザープラズマX線発生装置の模式図

 

図4-31 得られたX線のスペクトル(赤)

図4-31 得られたX線のスペクトル(赤)

比較のため、これまでのレーザープラズマX線発生装置で得られたものを青色で示しています。

 

図4-32 本装置で得られたX線を用いた蜘蛛の吸収コントラスト像(a)と位相コントラスト像(b)

図4-32 本装置で得られたX線を用いた蜘蛛の吸収コントラスト像(a)と位相コントラスト像(b)


通常のX線撮像では、X線が物質によって吸収されることにより作られる濃淡(コントラスト)により画像を形成する「吸収コントラスト法」が使われてきました。しかし、X線吸収の少ない生体軟部組織や小動物などの像は濃淡がはっきりせず、微細構造を見ることが困難でした。そのため、物質による吸収ではなく、屈折による効果を用いる「位相コントラスト法」が注目されています。これには、X線の位相がよくそろっていることが必要で、従来は、X線管に工夫を凝らした装置や、大型の電子加速器からのシンクロトロン放射光,レーザープラズマX線源などが使われてきました。しかし、X線管やレーザープラズマX線源は小型ですが輝度が低く、一方、シンクロトロン放射光は輝度は高いが装置が巨大と一長一短で小型で高輝度・高性能の新たなX線源の開発が待たれていました。

今回、私たちは、高強度レーザーを用いたレーザープラズマX線の研究を進め、照射条件を工夫することにより、新しいX線発生装置を開発しました。レーザープラズマX線源は、物質をプラズマ化し、加速された電子がイオンを励起したり、制動放射することで、X線を発生させます。従来は、不要な制動放射X線が多く、必要とする波長のX線は低輝度でした。私たちは、レーザーに含まれる不要なパルスを除去し、集光位置を制御することで、電子に適切なエネルギーを与え、制動放射X線を抑えて、必要なX線発生数を最大化することができました。図4-30に示す装置により、ピーク出力2TW、パルス幅70fsのチタンサファイアレーザー光を、アルゴンガス中に集光させました。その結果、図4-31に示すように、不要なX線の少ない、高コントラストのX線を得ることに成功しました。これにより、試料や生体に対して不要なX線照射を減らすことができ、同時に、鮮明な画像を得ることが可能になりました。更に、このX線の輝度は、1020photons/s/mm/mradであり、これはシンクロトロン放射に匹敵する高い輝度です。また、このX線は、100fs程度のパルス幅と推定されるので、極めて高速な現象をとらえることができます。

このX線源を用いて、蜘蛛の吸収コントラスト像と位相コントラスト像を取得しました(図4-32)。吸収コントラスト法では見えない微細な構造を、位相コントラスト法では明瞭に見ることができます。これにより、本装置は位相コントラスト法に適したX線源であることを示しました。

本装置は、位相がそろい、出力が高く、不要なバックグラウンドの少ないX線を生成する、新たな小型X線発生装置と位置付けられます。特に、位相コントラスト法によるCT(コンピュータ断層撮影)に適用すると、従来のCTよりも細かい構造が見えること、患者への不要なX線照射を少なくできることなどから、新たな医療診断法になると期待されます。


●参考文献
Chen, L. M., Kando, M. et al., Phase-contrast X-ray Imaging with Intense Ar Kα Radiation from Femtosecond-laser-driven Gas Target, Applied Physics Letters, vol.90, issue 21, 2007, p.211501-1-211501-3.


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