7-1 稠密度の高い燃料集合体の冷却性能を明らかに

−原子炉条件を模擬した大規模試験による把握−

図7-4 燃料集合体断面形状の比較

図7-4 燃料集合体断面形状の比較

水冷却増殖炉では中性子の減速を抑えるため、燃料棒の間隔を狭くしています。燃料集合体を流れる水の量が少ないため、燃料棒を冷やすことができるかどうかが炉心成立性の上で重要な設計課題になっています。

 

図7-5 大型熱特性試験部

図7-5 大型熱特性試験部

水冷却増殖炉を模擬した稠密37本バンドル試験体を用いて、原子炉と同じ高温高圧条件での炉心冷却性能を調べました。

 

図7-6 定格運転時の熱的限界に対する試験結果

図7-6 定格運転時の熱的限界に対する試験結果

水冷却増殖炉の設計出力に対して、30%以上の熱余裕があることを実証しました。

水冷却増殖炉は、現行軽水炉をベースに、炉心部分に混合酸化物(MOX)を燃料とした高速炉心を導入して238Uから239Puへの転換を促進し、増殖性を得ようとするものです。この際、水は中性子を減速・吸収する効果が大きいため、炉心における水の存在割合をできる限り少なくする必要があります。水冷却増殖炉では、燃料棒を三角格子状に配置し、燃料棒間隔を極端に狭くして稠密度の高い燃料集合体にすることにより、中性子の減速を抑えています(図7-4)。一方、水は冷却材としての役割も有しているため、少ない水でどこまで燃料棒を冷やすことができるかが、炉心設計における重要な課題となっています。

そこで私たちは、水冷却増殖炉の燃料集合体を模擬した稠密37本バンドル試験体を用いて、設計炉心と同じ高温高圧条件において、伝熱的・流動的限界を調べる試験を行いました(図7-5)。このような試験を行うには、大規模な水循環ループや大容量の電源設備(3MW級)が必要であり、これまでは燃料棒本数の少ない小規模な試験や低圧条件での試験しか行われていませんでしたが、「大型再冠水実験棟」の試験装置を利用することで大規模熱特性試験を実現しました。試験では、定格運転時の熱的限界を調べる試験、異常事象(流量低下・出力上昇)時の燃料棒の熱的安全性を確認する試験、炉心での流動抵抗や水の割合を測定する試験などを行いました。図7-6は、設計炉心と同じ高温高圧条件(水温283℃,圧力7.2MPa)において熱的限界を調べた結果です。ここで、縦軸は燃料集合体を安定に冷却できる限界を示してします。一連の試験の結果、水冷却増殖炉の設計出力に対して30%以上の熱余裕があり、熱的な成立性に問題のないことを明らかにしました。このような試験を、圧力・温度・流量などをパラメータとして多数実施し、稠密度の高い燃料集合体における実験データベースを蓄積するとともに、熱的限界や流動抵抗を高精度で予測できる相関式を開発しました。これらの成果は、炉心設計に用いられている熱流動解析コードに反映され、水冷却増殖炉の熱的安全性評価に役立てられています。

本研究は、文部科学省からの受託研究「超高燃焼水冷却増殖炉用燃料集合体に関する技術開発」による成果の一部です。


●参考文献
Tamai, H. et al., Pressure Drop Experiments using Tight-lattice 37-rod Bundles, Journal of Nuclear Science and Technology, vol.43, no.6, 2006, p.699-706.


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