7-8 発電用高温ガス炉の優れた経済性

−高温ガス炉とガスタービンの利点を活かしたシステムの設計研究−

図7-21 高温ガス炉ガスタービン発電システムの経済性向上の要因

図7-21 高温ガス炉ガスタービン発電システムの経済性向上の要因

高温ガス炉ガスタービン発電システムは、原子炉,ガスタービン及び発電機を収めた動力変換機,熱交換容器等から構成され、大変簡素なシステムです。

 

図7-22 建設コストの比較(a),発電コストの比較(b)

図7-22 建設コストの比較(a),発電コストの比較(b)

建設コストについては、高温ガス炉では炉心が大きくなるため、炉心を含む原子炉設備の割合が大きくなるものの、動力変換設備や補助設備の割合が減少します。このため、効率を考慮すると、高温ガス炉の建設コストは20万円/kWeとなり、資本費(建設コスト),運転維持費,燃料費の合計で示される発電コストは約4円/kWhとなります。

私たちは、温室効果ガス排出削減に貢献するため、先進的発電システム技術の開発を実施しています。高温ガス炉ガスタービン発電システム(GTHTR300)は、高温ガス炉から取り出した850℃の高温ヘリウムガスを直接利用してガスタービンを駆動し、発電を行います(図7-21)。その発電効率は、約300℃の蒸気を熱源とする軽水炉より、10%以上も向上し、約46%になります。また、炉心を冷却する一次冷却材ヘリウムをガスタービンに導くため、二次系が不要となる上に、軽水炉のような蒸気系発電設備,水系の補助設備が大幅に簡素化できます。加えて、高温ガス炉の優れた安全性を活かして、事故時の炉心冷却設備等を大幅に簡素化できます。ただし、高温ガス炉の炉心の出力密度は、軽水炉の約1/10の6MW/m3に過ぎず、炉心が大きくなってしまう問題点もあります。

セラミック製の被覆燃料粒子から成る燃料については、燃焼度を既存の軽水炉の3倍程度の120GWd/tまで向上させても、照射健全性を十分に確保できます。これは、1tのウラン燃料から既存の原子力発電所約1基分相当する1GWのエネルギーを120日分も取り出せることを示しています。その一方で、被覆燃料粒子の製造工程が多少増える問題もあります。

このようなGTHTR300の経済性を既存の軽水炉と定量的に比較評価しました。まず、建設コストについては、機器重量に基づく材料費を計算し、更に設計費,製作費を評価しました。この結果、単位発電量当たりの建設コストは、軽水炉の約75%と評価されました(図7-22(a))。また、燃料費は、製造費が高くなる反面、使用済燃料量が軽水炉の約1/3となるため再処理費が減り、軽水炉の燃料費とほぼ等価になりました。運転維持費については、不活性なヘリウムガスを冷却材に用いるため、メンテナンスが容易となることなどから、軽水炉の約65%になりました。総合すると、GTHTR300の発電コストは設備利用率が80%の場合、約4.2円/kWhであり、既存の軽水炉の電力費の5.3円/kWhの約80%であることが示されました(図7-22(b))。更に、将来的に法令が改訂され、2年間の連続運転が許可されれば、設備利用率90%以上の達成は容易であり、その場合の電力コストは、3.8円/kWh以下となります。

本研究内容は、文部科学省からの受託研究「核熱利用システムの技術開発」の成果の一部です。


●参考文献
武井正信,國富一彦ほか,高温ガス炉ガスタービン発電システム(GTHTR300)の経済性評価,日本原子力学会和文論文誌,vol.5, no.2, 2006, p.109-117.


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