11-2 1本の光ファイバで観察しながら治療する

−レーザー照射機能を有する極細内視鏡の開発−

図11-7 先天性疾患:双胎間輸血症候群(TTTS)

図11-7 先天性疾患:双胎間輸血症候群(TTTS)

双子に血液を送る血管が胎盤の中でつながり、それぞれの胎児への血流がアンバランスになる現象(放置すれば7割以上の確率で胎児が死亡)。根本的治療法としては、レーザー焼灼によって胎盤上で吻合する血管を断ち切る方法(FLP治療)があります。

 

図11-8 レーザー照射機能を持つ内視鏡システム

図11-8 レーザー照射機能を持つ内視鏡システム

外径2mm、1本の光ファイバスコープでレーザー照射と観察を同時に行うことが可能なシステムを試作しました。

図11-9 あらゆる位置での胎盤治療を可能とする技術

図11-9 あらゆる位置での胎盤治療を可能とする技術

屈曲型外筒管の中に複合型光ファイバスコープを導入することで、前置胎盤にも対応可能になります。

双胎間輸血症候群(TTTS)は、子宮内の双胎が発症する先天性疾患の一つです。高度先進医療に指定されているこの疾患は、一つの胎盤に対して二つの羊膜から成る場合(一絨毛二羊膜性双胎)にのみに発症します。通常の一絨毛二羊膜双胎の場合、それぞれの血管が胎盤でつながり、バランス良く血液の循環を行っていますが、何らかの理由により双胎間で行き来している血流のバランスが崩れ、片方の胎児のみに血液が流れ続けてしまうとTTTSを発症します。近年では、TTTSの根本的治療法として内視鏡で観察しながらレーザーで治療する方法(FLP治療)が注目されています(図11-7)。

しかしながら、全国的にFLP治療の歴史が浅く、実際にFLP治療を行える病院は全国でも数ヶ所しかないのが現状です。また、この治療が狭い空間である子宮内(羊水中)に浮遊する胎児を対象とすることから、(1)胎盤上で繋がった血管の明確な配置(地図)が不明、(2)光ファイバの先端と血管の位置(距離)が不明、(3)血流が止まったかどうか定量的な判断ができない、(4)内視鏡の視野が狭い、(5)母親の腹側に胎盤が付着している場合(前置胎盤)に対応しにくいなどの問題があり、現在の内視鏡手術機器には高度な技術的進歩が必要とされ、更に、医師の高い技術が求められていました。

そこで、FLP治療に貢献するために、核融合炉を保守するロボットを開発する過程から生まれた、1本の光ファイバで観察とレーザー照射が同時にできる「複合型光ファイバ」技術を活用し、これまでの問題点をほぼ解決できる見込みのある装置を試作しました(図11-8)。

本システムは、映像の真ん中にレーザー照射ができ、対象物までの距離及び血液の量や速度を測る機能などを搭載していますので、比較的容易かつ安全に正確なレーザー照射が可能と考えられ、上記の先天性疾患の胎内外科治療に威力を発揮する器具として期待されています。また、前置胎盤の場合でもレーザー照射が容易となると考えられます(図11-9)。更に、内視鏡の外径を2mmと小さくすることで腹部に開ける穴の径も小さくなり、母体への負担が大きく軽減されること(低侵襲治療)も期待できます。本システムは、動物実験によりその有効性を確認しており、現在、臨床応用に向けた開発を進めています。


●参考文献
岡潔, レーザー照射機能持つ極細内視鏡を開発−胎児治療などへ応用−, エネルギーレビュー, vol.27, no.7, 2007, p.7-10.


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