14-2 短寿命放射性核種のビーム利用を実現

−放射性核種用イオン源の開発−

図14-3 放射性核種用イオン源の概略図

図14-3 放射性核種用イオン源の概略図

イオン化する元素の化学的特性にあわせて、ウラン標的が装着できる2種類のイオン源を開発しました。
(a)表面電離型イオン源(〜2300℃運転):イオン化室内壁の熱した金属表面での電子のやり取りによってイオン化する
(b)低圧アーク放電型イオン源(〜1500℃運転):イオン化室内にアーク放電を発生させてイオン化する

 

図14-4 イオン化に成功した核種とビーム強度

図14-4 イオン化に成功した核種とビーム強度

陽子誘起ウラン核分裂で生成する約40元素400核種の中性子過剰核種のうち、2種類のイオン源を使うことで19元素105核種のイオン化に成功しました。

私たちは、タンデム加速器施設において自然界には存在しない放射性核種を専用の放射性核種ビーム加速器で加速するためのイオン源の開発を行っています。陽子ビームをウランに照射すると、約40元素400核種の放射性核種が生成します。生成する放射性核種は微量であり寿命が数秒以下と短いため、これらを効率的に加速するためには、ウラン標的の中から生成核種を高速に拡散・蒸発させ、瞬時にイオン化することが必要です。このため、独自のウラン標的及び元素の化学的特性にあわせた2種類の放射性核種用イオン源を開発しました。

ウラン標的については、ウラン量を増やすことで放射性核種の生成量は多くなりますが、大きな固まりでは拡散・蒸発が遅くなってしまいます。また、蒸発の速度を促進するためには、標的の温度を高くしなければなりません。そこで、高温でも化学的に安定な炭化ウランを繊維状のグラファイトを母材として合成することで、ウラン量(〜800mg/cm)を確保しつつ、表面積が大きく生成核種が拡散・蒸発しやすいウラン標的を開発しました。

イオン源の開発では、微量な放射性核種を高効率でイオン化することが重要です。ウラン標的では様々な元素の放射性核種が生成しますが、一種類のイオン源ですべての元素をイオン化することはできません。そこで、元素の化学的特性にあわせた2種類のイオン源を開発しました。イオン化電位の低いアルカリ元素,アルカリ土類元素,希土類元素に対しては、表面電離型イオン源(図14-3(a))が適しています。これについては、高効率でイオン化するためにイオン化室内壁の温度を高くする必要があり、2300℃まで昇温可能なイオン源を開発しました。また、Kr,Xeガスや揮発性の高いSn,In,Ag,Cuなどはアーク放電中でイオン化電位に依存せずイオン化できる低圧アーク放電型イオン源(図14-3(b))が適しています。これについてはウラン標的を高温に保つ専用ヒーターを組み込み、高効率でイオン化室に放射性核種を輸送できるイオン源を開発しました。

今回のイオン源を開発したことにより、図14-4に示すように、19元素105核種について、最大毎秒107個の放射性核種を放射性核種ビーム加速器に供給することが可能となりました。これらの放射性核種ビームによって、宇宙における元素合成過程の解明や短寿命放射性核種による物質構造解析の研究が大きく前進することが期待されます。


●参考文献
Osa, A. et al., Ion Source Development for the On-line Isotope Separator at JAEA, Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, vol.266, issues 19-20, 2008, p.4394-4397, DOI: 10.1016/j.nimb.2008.05.063.


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