14-3 高速炉燃料の実用化を目指した燃料特性の研究

−ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料の融点と状態図−

図14-5 融点付近まで加熱された40%Pu含有MOXの組織

図14-5 融点付近まで加熱された40%Pu含有MOXの組織

(a)従来法によりWカプセル中に試料を封入して2963Kまで加熱した試料の微細組織を示します。電子線マイクロアナライザーによる元素分析の結果、試料中には、結晶粒界に沿って金属WとPu酸化物が観察されました。また、試料は変形し、溶融したことを示しました。
(b)Re内容器により2978Kまで加熱した試料の微細組織を示します。結晶粒の粗大化が観察されますが、試料が溶融した形跡は観察されませんでした。

 

図14-6 UO2-PuO2系の固相線及び液相線の変化

図14-6 UO-PuO系の固相線及び液相線の変化

従来のMOXの融点に比べ、50〜200K高いことを明らかにし、理想溶液モデルによって、固相線を±20Kのばらつきで表すことができました。

核燃料の必須な条件として、運転期間において破損せずに健全に燃焼することが求められます。核燃料の破損を防ぐための条件の一つとして、燃料が溶融しない必要があり、燃料設計では核燃料の融点によって許容される最大線出力を決定しています。

私たちが実用化に向けた研究・開発を進めている高速炉リサイクル技術では、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料が用いられています。MOXの融点は、1960〜1970年代にプルトニウム(Pu)と酸素(O)含有率をパラメータとして取得され、その状態図が評価されました。しかし、それらの測定結果では、測定後の試料の分析が行われておらず、測定中の組成変化が評価されていませんでした。また、測定データも大きなばらつきを持っています。本研究において、従来の測定方法では測定中に組成変化が起こり、正しい融点を測定できていないことを明らかにしました。また、新しい測定方法を開発しPu及びO含有率をパラメータとした測定を行い、その状態図を約40年ぶりに改定しました。

MOXの融点測定は、試料をタングステン(W)カプセルに真空封入し、一定の昇温速度で加熱します。試料が溶融するときに融解熱によって加熱曲線に温度停滞が観察されます。その温度停滞の開始温度と終了温度から融点を決定することができます。

図14-5に、約40%Puを含むMOXの昇温試験結果を示します。図14-5(a)は、従来法と同様にWカプセルで2963Kまで昇温した試料の組織を示しますが、この試料は、溶融によって試料形状が変形し、試料中の結晶粒界に金属WとPu酸化物の析出が観察されました。図14-5(b)には、更に高い温度の2973Kまで昇温した試料の組織を示しますが、この試料はWカプセル内にレニウム(Re)内容器を入れ、その中に試料を入れて加熱しました。その結果、試料は試験前の形状を保っており、組織観察で結晶粒の粗大化が観察されましたが、試料の溶融や金属相などは観察されませんでした。これらの試験結果は、従来の測定では、カプセル材のWと試料が加熱中に反応を起こし、正しい融点を測定できていないことを示していると考えられます。また、Wと試料の反応は30%Pu以上のMOXの測定で起こることを確認しました。

図14-6にRe内容器を用いて測定した固相線,液相線を示します。測定結果は、理想溶液モデルにより評価し、図中に示す状態図を得ました。計算結果は、実験結果を±20Kで再現することができ、従来の状態図に比べて、MOX燃料の融点は50〜100K高いことを明らかにしました。本成果により、燃料設計上のMOX燃料の最大線出力に対する安全裕度を確認するとともに、燃料設計の合理化に反映することが期待されます。


●参考文献
Kato, M. et al., Solidus and Liquidus Temperatures in the UO2-PuO2 System, Journal of Nuclear Materials, vol.373, issues 1-3, 2008, p.237-245.


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