2-1 地層処分技術の知識の活用に向けて

−知識マネジメントシステムの詳細設計−

図2-3 知識マネジメントシステムの詳細設計概要(*については資源エネルギー庁受託事業として実施)
拡大図(144KB)

図2-3 知識マネジメントシステムの詳細設計概要(*については資源エネルギー庁受託事業として実施)


放射性廃棄物の地層処分の特徴は、将来数万年といった極めて長い時間を対象として安全を確保しようとする点にあります。こうした超長期間にわたる安全性を実際に体験することは無理で、様々な証拠に基づく説明を社会に納得してもらう必要があります。その説明が信頼に足るものとなるためには、その基となる科学技術的な知識基盤が確かなものであることが不可欠です。地層処分の研究開発はこうした知識基盤を適切に整え、その成果によって技術の信頼性を高めることを目的としています。

地層処分の安全性の説明は、多くの学問分野の多量の知識がかかわる複雑な構造です。主要な部分だけでも報告書にすると数千ページにも及ぶ膨大な情報を含んでいます。また、関連する知識は数10年以上にわたる処分事業期間のうちに急激に増加し続けることは想像に難くありません。こうした新しい知識も取り入れながら安全性の説明が信頼に足ることを継続的に示していくためには、多様な知識を常に活用できるよう体系的に蓄積しておくことが重要です。

研究開発成果は、データベース,解析用ソフトウェア,技術報告書といった知識基盤として取りまとめられ、研究の進展によって得られる新たな知見を反映してその更新が行われています。こうした成果が地層処分の安全性の説明にどのように貢献しているかについても適宜検証され意義を確認しつつ研究開発が進められています。こうした検証に当たっては、新たな知見が安全性の信頼性を向上させているか、あるいは逆に疑問を呈することになっていないかといったことを注意深く検討します。これは非常に手間のかかる作業で、単に多量な情報の中から個別の知識を利用するだけでなく、安全性の説明の枠組みの中でこうした知識を位置づけ、関係者間で共有するための新たなプラットフォームを構築することが必要です。

このように地層処分技術の鍵となるのは知識の適切な管理です。開発中の知識マネジメントシステムでは、「地層処分は長期的に安全である」という主張に関する説明を、主張の根拠となる種々の「論証」とある論証に対して考えうる「反証」との連鎖で表現(討論モデル)し、知識ベースに格納されている地層処分技術に関する様々な知識が、安全性の説明という観点からどのように利用されているかをユーザーが理解できるように工夫しました。

これにより、新たな知見が安全性に与える影響を理解した上で課題を設定し、これを解決するために必要な調査や試験、解析あるいは研究開発を論ずることによって効果的な知識創出のための計画策定を行うことが可能となります。こうした作業は専門家の経験やノウハウなどいわゆる暗黙知に依存する部分が大きいのですが、それらをできるだけ引き出して、エキスパートシステムとして組み込むことによって、作業の効率性や品質の向上、こうした経験やノウハウの次世代への継承をできるだけ高めるようにしています(図2-3)。このような考えに基づいて、最新の知識工学的手法を適用してインテリジェント化を図った知識マネジメントシステムの詳細設計を完了しており、今後は更にユーザーのニーズを抽出し、その具体的な反映などの施策を行いながら2010年度を目途にプロトタイプを開発する計画です。


●参考文献
大澤英昭ほか, 地層処分技術に関する知識マネジメントシステムの設計概念, 火力原子力発電, vol.621, no.6, 2008, p.26-33.


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