2-6 地下水の地球化学データを対象とした品質評価手法の構築

−Evidence Support Logicに基づいた手法の提案−

図2-10 pHの品質を評価するためのプロセスモデルの一部

図2-10 pHの品質を評価するためのプロセスモデルの一部

ESLに基づく品質評価手法では、命題となる品質評価項目(ここではpHの測定結果)の品質に関連する項目を網羅的に抽出し、系統的に分類して階層構造を構築します。各階層の末端に具体的な数値を入力することによって、命題が持つ真,偽及び不確実性の確立を算出します。

 

図2-11 pHの品質評価結果

図2-11 pHの品質評価結果

ボーリング孔より取得したデータの品質を評価しないでプロットした結果(a)に対して、品質評価で一定以上の品質を示したデータをプロットした結果(b)はより狭い範囲にデータが分布しました。

近年、水資源開発や放射性廃棄物の地層処分研究などの分野において、地下深部の地下水の地球化学的研究が活発になりつつあります。しかし、地下水の地球化学データを得るための調査では、それぞれの調査において調査手法や品質管理方法が異なります。そのため、それらのデータを横断的に利用する場合には、品質の差に起因した問題が生じる可能性があります。この問題を解決し、地球化学データのデータセットから横断的に深部地下水の地球化学データを利用するためには、利用者が要求する品質に応じたデータを抽出できる手法を開発することが有効であると考えられます。本研究では、地下水データの品質を定量的に評価するための品質評価手法を確立することを目的として、Evidence Support Logic (ESL)に基づいた品質評価手法を提案しました。ESLの基本的な考え方は論理演算に類似していますが、論理演算中で用いられる真偽のほかに、「不確実性」を加えた三つの要素が用いられます。ESLにおける不確実性とは、評価する命題が真とも偽とも判断できない確率を示します。ESLによる品質評価手法の特徴は、設定した仮説(図2-10では、測定したpHは実際の地下水の値を示している、ということが仮説となる)を証明するための根拠を抽出し、関連項目によって分類し、階層構造(プロセスモデル)(図2-10)を構築することです。プロセスモデルは命題に示した評価項目の品質にかかわる要因を網羅的に抽出して構築するため、品質評価過程を明示するだけでなく、品質が低い場合には原因を特定し、調査手法を改善するためにも有効です。

当該手法を用いてボーリング孔から取得したpHデータの品質評価を行った結果、全データ(n=63)を深度に対してプロットした場合には、pHが概ね8〜11の広い範囲で分布したのに対し、一定の品質を満たしたデータ(n=23)では概ね8〜9のより狭い範囲に分布しました(図2-11)。一定の品質を満たしていないデータを検証すると、ボーリング孔掘削中に起こり得る地下水に対する汚染や試料採取方法に対して十分な品質管理が行われていなかったことが明らかとなりました。このことから、一定の品質を示したデータはより正確に各深度のpHを表していると考えられ、本研究で提案した品質評価手法の有効性を示すことができました。

本研究の品質評価手法に基づいた地球化学データの品質評価を実施することで、地下深部における実際の地球化学環境を反映した地球化学データを抽出できることを示しました。そのため、本手法は品質評価手法としては有効であると考えられます。


●参考文献
水野崇ほか, 地下水の地球化学調査に関わるデータ品質評価手法の提案, 日本地下水学会誌, vol.49, no.2, 2007, p.139-152.


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