2-8 地層処分研究開発における将来予測への取組み

−地史に基づく数10万年後の地下水流動の長期的変遷の推定−

図2-14 地下水流動の長期的変遷を推定するための手順

図2-14 地下水流動の長期的変遷を推定するための手順

過去から現在までの地史(地質学的変遷)を把握するとともに、それに伴う地下水流動の変化を推定し、現在から将来にわたる長期的変遷を予測するという研究の進め方を示したものです。

 

図2-15 幌延地域における地下水流動の長期的変遷の概念図

図2-15 幌延地域における地下水流動の長期的変遷の概念図

将来数10万年程度の期間を対象として、氷期における状況を誇張して描いた幌延地域の概念図です。将来の地下水流動に影響をもたらすと考えられる永久凍土の発達や海岸線位置の移動、地形変化など茶色文字で示した天然現象を整理し、現在の地下水流動を基準として将来の地下水流動を推定しています。

地層処分された廃棄物が、自然過程を介して人間とその生活環境に影響を及ぼす代表的な道筋として、地下水により放射性物質が処分場から人間の生活環境へ運ばれると想定した地下水シナリオが挙げられます。その地下水の流れ方(地下水流動)は、将来の気候・海水準変動による降水量や海岸線位置の変動に加えて、隆起・沈降・侵食に伴う地形・地質構造の変化によって、長期的に変化していくと考えられます。このため、地層処分の長期的な安全性に対する信頼性をより一層向上させる上では、地下水流動の長期的な変化を考慮して安全性を評価することが重要です。そこで私たちは、北海道北部の幌延地域を事例として、気候・海水準変動や隆起・沈降・侵食などの天然現象による変化を考慮して地下水流動の長期的変遷を予測するための調査・解析技術の開発に取り組んでいます。

将来予測の方法は様々ですが、実験が可能な期間よりはるかに長期となる天然現象の予測では、以下の二つが基本となります。一つは、過去から現在までの地史(地質学的変遷)から時間及び空間的な変化の傾向や規則性を読み取り、それらを将来へ外挿し予測する方法です。二つ目は、予測しようとする現象と類似の事例を検討することにより現象の一般化を図り、その類推から将来を予測する方法です。いずれの場合でも、対象地域の地史を把握することが非常に重要です。私たちは、それらの方法を組み合わせて、将来の地下水流動の長期的変遷を予測するための手順を開発しました(図2-14)。これは、過去の地質学的変遷とそれに伴う地下水流動の変化を推定し、過去から現在までの傾向と規則性は将来ともに継続すること及び将来の天然現象は過去と同様の様式で発生することを前提として、現在から将来にわたる長期的変遷を予測するという方法論です。

幌延地域の地史に基づくと、氷期には、永久凍土の発達と降水量の減少による地下水の涵養量の低下に加えて、地形変化と海水準の低下による動水勾配の変化により、地下水の流速や流動経路が変化するものと推定されます(図2-15)。これまでに、それら天然現象による変化を考慮した地下水流動解析を行い、過去から現在までの地下水流動の長期的変遷を推定しました。

今後は、地史に基づいて推定した過去から現在までの地下水流動の変遷について、ボーリング調査などにより得られた地下水の地球化学データ(地下水水質など)との整合性を確認していく予定です。


●参考文献
新里忠史ほか, 北海道北部, 幌延地域における後期鮮新世以降の古地理と地質構造発達史, 地質学雑誌, vol.113, suppl., 2007, p.119-135.


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