2-9 地表から地下への水の動きを探る

−北海道幌延地域での表層水理調査の概要−

図2-16 表層水理調査の概念図

図2-16 表層水理調査の概念図

地表から地下への水の浸透量(涵養量)は、降水量から蒸発散量及び河川流出量を差し引いたものとして推定されます。

 

図2-17 地形及びボーリング孔データから推定した地下水位の比較
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図2-17 地形及びボーリング孔データから推定した地下水位の比較

地下水位の高まりは水理学的な境界(分水嶺)の一つととらえることができます。地形から推定された分水嶺は、浅層ボーリング孔での地下水位から推定される実際の分水嶺と異なることが明らかとなりました(図中の英字、数字はボーリング孔名)。

雨や雪などは、地表に降った後、地表や植物からの蒸発散、河川や湖沼への流下、流出分を差し引いた分が、土壌を経由して地下へ浸透します。地下への浸透量である涵養量は、地層処分の安全性を評価する上で重要な地表から地下深部にわたる地下水流動を評価するための水理学的な条件として必要となります。この地下への浸透量(涵養量)は、直接測定することが難しいため、降水量や河川流出量,蒸発散量(地表からの蒸発量と植物からの蒸散量をあわせた値)に基づいて、水収支のバランスから推定することになります。

原子力機構幌延深地層研究センター(北海道幌延町)では、幌延深地層研究計画の一環として、気象観測所での風向,風速,降水量や気温,湿度などの気象データ観測,河川流域における河川流量観測,深度数10m程度の浅層ボーリング孔での水位観測などからなる表層水理調査を行っています。この調査では、流域の設定から観測,涵養量などの推定までの一連の調査手法が適用可能かどうかを具体的に確認することを通じて、表層部での水収支及び地下水流動特性を把握するための調査手法の確立を目的としています(図2-16)。

これまでの観測結果から推定された対象領域全体の涵養量は年間約120mmであり、降水量(約1,375mm)の1割程度が地下に浸透していることが明らかとなりました。また、地下水流動における水理学的な境界となる分水嶺が、地形の起伏から推定されたものと浅層ボーリング孔での地下水位の計測結果から推定されたものとで異なることが明らかとなりました。これらの結果は、地下水流動を評価する際の境界条件や初期条件及び対象領域の設定において重要な情報となります(図2-17)。

今後、積雪の影響を含めた降水量や蒸発散量を精密に測定するための装置による観測結果や、水質の分布、年代などのデータとこれまでの観測結果との比較を通じて、これまでの流域の設定範囲などを含めた観測手法や観測結果の妥当性を確認する予定です。


●参考文献
戸村豪治, 操上広志ほか, 幌延深地層研究における表層水理調査の現状, JAEA-Research 2007-063, 2007, 46p.


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