3-2 プラズマの圧力による自発回転を発見

−自律性の高い高圧力プラズマの理解へ−

図3-4 (a)自律性の高い高圧力プラズマの概念図 (b)JT-60プラズマの形

図3-4 (a)自律性の高い高圧力プラズマの概念図

横軸にプラズマ半径をとったときのプラズマの圧力,回転,電流分布を示しています。高い圧力のプラズマでは、この圧力,回転,電流分布が相互に強くリンクした自律系を成しています。

(b)JT-60プラズマの形

ドーナツ状をしているJT-60は、様々な方向から入射できる高速の中性粒子ビーム(NB)を用い、プラズマに力を与え回転分布を自由に変える実験ができます。

図3-5 (c)回転分布の決定機構 (d)プラズマ圧力と自発回転の関係

図3-5 (c)回転分布の決定機構

最終的な回転分布は、外部からのNBによる回転とプラズマ自身による自発回転で決まります。独自に開発した実験と解析の手法によって、回転の輸送過程を解明し、NBによって生じる回転分布を評価しました。ここで評価した回転と実験で観測した実際の回転を比較することで、自発回転を導きました。

(d)プラズマ圧力と自発回転の関係

圧力勾配の増大とともに自発回転が増大し、両者の強いリンクを実験から明らかにしました。色の違いは、NB入射の方向とパワーの違いを示します。

核融合炉に必要な高い圧力のプラズマでは、図3-4(a)に示すように、プラズマの圧力分布,回転分布,電流分布が相互に強くリンクしています。このような強いリンクのある状態を自律系といいます。核融合炉の実現には、これら分布の関係を理解し制御することが必須です。しかし、プラズマの安定性などを決める大切な要素である回転分布が、どのような仕組みで決まっているか、圧力分布との関係はどうなっているかは未だ解明されておらず、世界の核融合研究の長年の課題でした。プラズマの回転とは、図3-4(b)に示すようなドーナツ型のプラズマが、レコードのように回ることをいいます。このプラズマの回転分布を決める過程としては、(1)高速の中性粒子ビーム(NB)をプラズマに入射し、力を与えて回す過程、(2)プラズマ内を熱が伝わるように回転が伝わっていく輸送過程、(3)プラズマが自分自身で回る自発回転があります。これらの個々の過程が複雑に入り交じり最終的な回転分布になると考えられていましたが、世界で広く用いられていた定常状態での回転分布を評価する実験と解析手法では、これらの過程を切り分けられませんでした。

これに対してJT-60では、図3-4(b)に示した様々な方向から入射できるNBを用い、一部のNBを入り切りして回転分布の時間変化を評価する独自の輸送実験と解析手法を考案することで、輸送過程を決定する拡散成分と対流成分を切り分けて、正しく評価できるようにしました。図3-5(c)に示すように回転の輸送過程が評価できると、NBで回る分の回転分布が予想できます。圧力の勾配が小さいときは、予想される回転分布と実際に観測された回転分布が一致し、NBによる力と輸送過程で回転が決まっていることが分かりました。圧力の勾配が大きくなると、冒頭に述べた自律性が高い状態になります。その場合、NBによる力と輸送過程だけでは説明できず、自発回転が生じることを見いだしました。この自発回転と圧力の勾配の関係を、様々な閉じ込めモードのプラズマで調べたものを図3-5(d)に示します。圧力勾配の増大とともに自発回転が増大し、両者が強くリンクしていることを世界で初めて明らかにしました。この研究成果により、自律性の高い、高圧力プラズマの自発回転の機構解明が可能になり、ITERや将来の核融合炉での回転分布の予測や自律系プラズマの制御手法に重要な知見を与えました。


●参考文献
Yoshida, M. et al., Role of Pressure Gradient on Intrinsic Toroidal Rotation in Tokamak Plasmas, Physical Review Letters, vol.100, issue 10, 2008, p.105002-1-105002-4.


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