3-8 核融合炉燃料トリチウムの安定供給に必要な材料

−水素により還元されないトリチウム増殖材料の開発−

図3-17 Li2TiO3の水素雰囲気中における高温加熱前後の試料色変化

図3-17 LiTiOの水素雰囲気中における高温加熱前後の試料色変化

LiTiO(Li/Ti=2.0)よりLi含有量の多いLi添加型LiTiO(Li/Ti>2.0)は白色です。トリチウム増殖材料は高温,水素雰囲気中で使用します。この環境ではLiTiO中のTiが還元され、結晶構造変化を伴う色の変化(黒化)が生じますが、Li添加型では色の変化は全くなく、還元されにくい試料となることを発見しました。

 

図3-18 各種添加型Li2TiO3のH2雰囲気中における酸素欠損量

図3-18 各種添加型LiTiOのH雰囲気中における酸素欠損量

H雰囲気中ではLiTiO中のTiが4価から3価へと還元され、 Oが欠損するという結晶構造の変化を生じます。Oの欠損量が少ないほど還元されにくい材料を示しており、Li添加型LiTiOは他の試料より還元されにくい試料であり、特にLi/Ti比が 3.9の材料については全く還元されないことが明らかになりました。

核融合炉は、重水素(D)とトリチウム(T)を燃料としますが、Tは自然界には存在しません。このため核融合炉のブランケットに充てんしたリチウム(Li)に中性子を照射しTを人工的に生産する必要があります。Li材料としては、T放出特性に優れ、低放射化材料であるチタン酸リチウム(LiTiO)が日本のT増殖材料の第一候補です。LiTiOはTを回収する際、水素(H)ガス中に高温・長時間置かれるため、Hにより材料が還元され、Tの放出速度が低下するなどの問題があります。このためHガスにより還元されないLiTiOの開発が必要でした。これまでの研究により、LiTiOにCaOを添加することで、高温使用時の結晶粒成長の抑制とともにHにより還元されにくい特性を持つ材料になることが分かりました。更に考察を深めた結果、極めて微量ではあるもののLi含有量がLiTiOより多い材料へと変化することで、Hにより還元されにくい特性を持つことが分かりました。本研究は、Li含有量の多いLiTiOとLiTiOの混合物(Li添加型LiTiO)にすることで、CaO添加時よりもHにより還元されない増殖材料の実現を目指したものです。

LiTiOを合成する際の出発原料としては、炭酸リチウムと二酸化チタンを用いるのが一般的です。しかしながら、これらの原料では未反応の炭酸リチウムが残るため、Li添加型LiTiOを合成できません。様々な合成方法を検討した結果、出発原料としてLiとTiの有機金属化合物を用いることで、Li添加型LiTiOの合成に成功しました。無添加LiTiO及びLi添加型LiTiOの水素雰囲気中における高温加熱前後の色の変化を観察したところ、無添加は水素雰囲気中にて還元反応が生じ、白色から黒色に変化しますが、Li添加型は水素により還元されず、高温加熱前後での色の変化はありませんでした(図3-17)。

また、LiTiOが水素により還元されると、色の変化だけでなく、試料中の酸素(O)欠陥による重量減少が生じるため、還元されにくさの程度は水素還元によって生じたO欠損量で定量的に評価できます。無添加LiTiO,CaO添加LiTiO,Li添加型LiTiO(Li/Ti=2.4,3.9)の、各試料の1molあたりのO欠損量を算出した結果が図3-18です。O欠損量は、Li添加型<<CaO添加<無添加の順となり、特にLi/Ti=3.9のLi添加型については全く還元されないことが分かりました。

本研究により、Hによる還元はLi添加で克服可能なことが分かり、ITERのための先進T増殖材料開発は大幅な進歩を遂げました。


●参考文献
Hoshino, T. et al., Non-Stoichiometory and Vaporization Characteristic of Li2.1TiO3.05 in Hydrogen Atmosphere, Fusion Engineering and Design, vol.82, issues 15-24, 2007, p.2269-2273.


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