5-5 炉心冷却水の急激な沸騰と泡のふるまいを測る

−反応度事故時燃料発熱量のより正確な予測を目指して−

図5-11 電気抵抗式ボイド率計の配置と計測領域

図5-11 電気抵抗式ボイド率計の配置と計測領域

(a)はボイド率計の設置状況を横から見た図、(b)は上から見た図です。挿入した電極に加え、模擬燃料棒も電極として使用します。コイル電極と中心線電極で流路中央部(C)を、燃料棒間線電極と燃料棒で燃料棒間領域(P)を、壁面板電極と燃料棒で壁面近傍領域(W)を計測します。

 

図5-12 各計測領域におけるボイド率の時間変化

図5-12 各計測領域におけるボイド率の時間変化

網掛けのない期間に模擬燃料棒が加熱されています。ボイド率が急激に上昇する時刻は壁面近傍領域で遅い傾向があります。また、流路方向のどの位置で初めにボイド率の急昇が起こるかは、条件によって異なります。

近年、軽水炉燃料の高燃焼度化が各国で進められています。高燃焼度化により、従来よりも多くのエネルギーを燃料から取り出すことができ、資源を有効に利用できます。一方で、燃料被覆管の腐食が進んだり、燃料内に燃焼によって生じるFPがたまり、燃料の材料としての性質が変化する可能性があります。このような燃料を用いた原子炉で万一事故が起こっても健全性を確保できるように、十分な安全余裕を見込んで設計するように基準が設けられています。私たちは、沸騰水型原子炉(BWR)において、制御棒が突然抜けてしまい、急激に核反応が進んで出力が上昇する反応度事故の際の安全余裕を、精度良く予測するための研究をしています。

原子炉内では、核反応で発生した速度の速い中性子が、冷却水によって減速されて次の核反応を起こすのにちょうどよい速さになる(熱中性子)ことによって、連鎖的な核反応が生じます。すなわち、燃料の周囲が完全に水に覆われている時に、最も核反応が生じやすくなります。現在、反応度事故時の安全余裕の基準は、この「完全に水に覆われている」状態での核反応による発熱を基に決められています。しかし実際には、反応度事故によって発熱量が上昇すると、周囲の水が沸騰し、蒸気の泡(ボイド)が発生します。このため、燃料の周囲にある水の量が実質的に減少して、核反応を抑える方向に働き(ボイド反応度フィードバック)、発熱量が減少します。したがって、ボイド反応度フィードバックを考慮すれば、より精度良く安全余裕を予測することができます。しかしながら、反応度事故のような急激な発熱時におけるボイドの発生,成長,移動などの挙動については測定が難しかったため、知見は非常に限られていました。そこで私たちは、図5-11に示すような実際の原子炉の燃料集合体を模擬した4本の模擬燃料棒(電気加熱)を持つ試験流路を製作し、流路内のボイドの体積割合(ボイド率)の分布を測定する実験を行いました。ボイド率の計測には、流路内に電極を設置し、電極間の電気抵抗値からボイド率を算出する電気抵抗式ボイド率計を用いました。流路の形状が複雑なので、図5-11のように計測したい場所にあわせて電極の形状をコイル,直線,板状にして設置し、電極の組合せを高速で切り替えて計測するという新しい手法を開発しました。このボイド率計を鉛直方向に三ヶ所(上段,中段,下段)設置し、各段において流路中央部(C),燃料棒間(P),壁面近傍(W)の3領域で測定を行いました。例として図5-12に、模擬燃料棒を事故時の急発熱を模擬して0.55秒間加熱した場合のボイド率変化を示します。ボイド率の値、変動が流路内の場所によって大きく異なることがはっきり分かります。このような計測を、冷却水の温度や流速、模擬燃料棒の加熱量などを変化させて数多く実施し、燃料棒急速発熱時のボイド率変化の正確な予測に必要な、貴重なデータベースを取得しました。得られた成果を基に、数値解析コードの性能向上を図り、国の安全規制に役立つように研究を進めています。

本研究は、経済産業省からの受託研究「燃料等安全高度化対策事業」の成果の一部です。


●参考文献
Satou, A. et al., Study on Transient Void Behavior During Reactivity Initiated Accidents Under Low Pressure Condition−Development and Application of Measurement Technique for Void Fraction in Bundle Geometry−, Journal of Power and Energy Systems, vol.1, no.2, 2007, p.154-165.


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