5-9 放射性廃棄物処分場の閉じ込め性能はどれくらいもつか

−ベントナイト系緩衝材の長期変質挙動のモデル化−

図5-18 高レベル放射性廃棄物地層処分システム概念

図5-18 高レベル放射性廃棄物地層処分システム概念

高レベル放射性廃液を固化したガラス固化体は、鉄の容器で密封して、安定な岩盤中に定置し、周囲を緩衝材で覆って埋設します。処分場の操業時には処分坑道の支保にセメントが有用ですが、閉鎖後長期間には地下水を高アルカリ化し、ベントナイトの性能を低下させることが懸念されます。

 

図5-19 高アルカリ溶液へのモンモリロナイトの溶解速度

図5-19 高アルカリ溶液へのモンモリロナイトの溶解速度

ベントナイト中の主要な鉱物であるモンモリロナイトが、高アルカリ溶液に溶解する速度を調べました。溶解速度の、水酸化物イオン活量aOH-及び温度への依存性が明らかとなりました。ベントナイトを押し固めた状態で行った本研究の結果は、懸濁状態での実験に基づく既往のモデルと比較して、aOH-依存性が強いことが分かりました。つまりアルカリ性の効果が敏感に現れるということです。

高レベル放射性廃棄物(HLW)の地層処分は、使用済燃料を再処理した後に残る高レベル放射性廃液をガラス固化体として安定化させ、オーバーパックという厚い鉄の容器で密封して、深い安定な岩盤中に定置し、周囲を緩衝材(ベントナイト)で覆って埋設する方法です。ベントナイトには、物理的な緩衝機能のほかに、地下水を流れにくくしたり、地下水中に溶けた放射性物質を吸着したりすることにより、放射性物質を処分場内に閉じ込めることが期待されています。HLWの中には、放射能が減衰するのに数万年以上もかかるような長寿命の放射性核種が含まれているので、ベントナイトの性質が長い期間を経てどのように変化するかを知る必要があります。

HLWは放射性壊変により発熱しており、処分直後にはベントナイトの温度は90℃程度になると考えられています。また、処分場の施工に使用するセメントからはアルカリ成分が地下水に溶解して地下水を高アルカリ性にします。このような廃棄体内部からの熱や高アルカリ環境が、ベントナイトを変質させることが考えられます。

ベントナイトの閉じ込め性能は、主にその主成分鉱物であるモンモリロナイトが担っているので、モンモリロナイトの溶解量が閉じ込め性能の低下に関係します。これまでは、モンモリロナイト粉末を用いた溶解実験を行って必要なデータが取得されてきました。しかし、実際の処分場で緩衝材に使う時にはベントナイトは押し固められた状態です。押し固められた状態では緩衝材中の空隙は非常に小さく、水分子は自由に動けないかもしれません。そのような拘束された状態の水と粉末と接する自由な水とではベントナイトとの反応速度は異なるかもしれないので、私たちは押し固めた状態で実験を行い、ベントナイトに起こる変化を観察しました。

実験により、図5-19に示すようにモンモリロナイトの溶解速度のOH活量(aOH-)及び温度への依存性が明らかとなりました。このデータを基に、溶解速度RA

 RA=3.5×10(aOH-1.4exp(−51000/RT)[kg/m/s]
とモデル化しました。ここでRは気体定数、Tは絶対温度です。ベントナイトを押し固めた状態での溶解速度には、粉体を水に懸濁させた状態で行われた研究に基づく既往のモデルと比較して、OH活量の影響が強く現れることが分かりました。

それゆえ地下水のOH活量が溶解速度を決める重要な因子ですが、地下水組成は、鉱物との化学反応や物質移動で変化します。そこで、押し固めたベントナイト内での物質移動速度(拡散係数)を実測し、これらのデータも組み入れて、ベントナイトの長期の性能変化を予測する手法を開発しました。これにより、化学反応と物質移行特性変化が相互に影響し合いながら進む変質現象を予測することが可能となりました。

今後は、押し固めた状態での溶解速度にOH活量が強く影響するしくみを解明して開発したモデルを処分場の地下水条件に適用できる科学的根拠とすることや、実験やフィールドでの観察結果との比較を重ねてモデルの妥当性を検証することが重要です。


●参考文献
Yamaguchi, T. et al., Experimental and Modeling Study on Long-Term Alteration of Compacted Bentonite with Alkaline Groundwater, Physics and Chemistry of the Earth, vol.32, no.1-7, 2007, p.298-310.


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