7-3 マイナーアクチノイド窒化物燃料の優れた熱特性を実証

−微小試料を用いてMA窒化物の高精度な熱伝導率取得に成功−

図7-6 熱拡散率測定装置の概略図

図7-6 熱拡散率測定装置の概略図

酸素濃度2ppm,水分濃度3ppm以下の高純度アルゴンガス雰囲気のグローブボックスに装置を設置しています。

 

図7-7 AmNの微小円板

図7-7 AmNの微小円板

直径約3mm,厚さ約0.6mmの微小試料で黒色を呈します。

 

図7-8 理論密度に換算したAmNの熱伝導率

図7-8 理論密度に換算したAmNの熱伝導率

UN, NpN, PuNと比較して熱伝導率が小さく、UOと比較して熱伝導率が大きいことが分かります。

原子力発電所の使用済燃料の中には、長寿命放射性核種であるマイナーアクチノイド(MA)が含まれており、その安全な処分が原子力エネルギー利用の課題となっています。この課題解決のため、MAの長期にわたる発熱と放射線毒性を大幅に低減できる安定または短寿命の放射性核種に核変換する技術が検討されています。このような核変換のための燃料として、今日まで様々な燃料が提案されていますが、窒化物燃料は、融点が高く、熱伝導率が大きく、異なるMA元素同士が広い組成範囲で良く固溶すると予測されることから、MA窒化物はMA核変換用燃料の有力な候補の一つとして注目されています。

このような背景から、MA窒化物の比熱、熱伝導率などの熱物性値の取得は燃料の設計を行う上で重要です。しかし、(1)MAは比放射能が高いため、試料の取扱量に制限がある。(2)MA窒化物は水分や酸素との反応性が非常に高く、水分や酸素の濃度が極めて低い環境下での試料の取扱いが必要になる。などの理由でMA窒化物の熱物性の実測値はほとんど存在しませんでした。このような研究の隘路を打破するため、本研究では、高純度アルゴンガス雰囲気のグローブボックス内に設置した微小試料測定用レーザーフラッシュ法熱拡散率測定装置(図7-6)と投下型熱量計を整備し、MA窒化物の熱拡散率及び比熱を測定し、MA窒化物の熱伝導率を求めました。

原料MA酸化物の炭素熱還元により調製した窒化物の微小円板は直径約3mmです(図7-7)。この微小円板及びその破砕片を用いて、熱拡散率測定及び比熱測定を行いました。

様々なMA窒化物を測定してきましたが、ここでは窒化アメリシウム(AmN)について説明します。AmNの熱拡散率は、温度の上昇とともに緩やかに減少する傾向があり、比熱はほかのアクチノイド窒化物と比較して大きな差はないことが明らかとなりました。一方、熱拡散率、比熱及び密度から熱伝導率を算出し、理論密度に換算したAmNの熱伝導率(図7-8)は1473 Kまでの温度領域では温度とともにわずかに増加する傾向を示し、窒化ウラン(UN),窒化ネプツニウム(NpN)及び窒化プルトニウム(PuN)の値よりも小さく、窒化物の熱伝導率は原子番号の増加とともに熱伝導率が小さくなる傾向を示すことが明らかとなりました。しかし、AmNの熱伝導率は二酸化ウラン(UO)の熱伝導率よりも大きいことから、熱特性の面でMA窒化物のMA核変換用燃料としての優位性が改めて確認されました。このほかにも、高温X線回折を用いたMA窒化物の熱膨張率の測定も進めています。

本研究は、文部科学省からの受託研究「窒化物燃料と乾式再処理に基づく核燃料サイクルに関する技術開発」の成果です。


●参考文献
Nishi, T. et al., Thermal Diffusivity of Americium Mononitride from 373 to 1473 K, Journal of Nuclear Materials, vol.355, issues 1-3, 2006, p.114-118.


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