7-6 高濃縮ウランを含む極微小粒子の選択的検出

−IAEA保障措置のための環境試料分析法の開発−

図7-12 濃縮度が異なるウラン粒子の FT(フィッショントラック)の顕微鏡写真

 

図7-12 濃縮度が異なるウラン粒子の FT(フィッショントラック)の顕微鏡写真

 

図7-13 FTが検出されるまでのエッチング時間と粒子中のウラン濃縮度

図7-13 FTが検出されるまでのエッチング時間と粒子中のウラン濃縮度

 

図7-14 FT形状(d), (f)とそれに対応するウラン粒子(e), (g)を示す顕微鏡写真

図7-14 FT形状(d), (f)とそれに対応するウラン粒子(e), (g)を示す顕微鏡写真

双方のFT形状は類似していますが、粒子の大きさから(e)の方が高濃縮であると判断できます。


保障措置のための環境試料分析法とは、国際原子力機関(IAEA)が保障措置の強化・効率化策の一環として未申告の核物質や原子力活動の「環境への痕跡」を探知するために導入した新たな保障措置手段です。このうち、粒子一つ一つに含まれるウランやプルトニウムの同位体比を求めるパーティクル分析は、原子力活動の履歴が推定できるので、有効な保障措置手法です。
 フィッショントラック(FT)-表面電離型質量分析(TIMS)法によるパーティクル分析は、粒径1μm(約4pgに相当)以下の極微小粒子に対しても同位体比測定が可能です。図7-12は、濃縮度が異なるウラン粒子(約1μmφ)に熱中性子を照射したときに観察されたFTの顕微鏡写真です。このようなFTを検出することにより、原子力施設から採取した環境試料から核分裂性物質を含む粒子を高感度に見つけ出すことができます。

FTの数は、粒子中のウラン濃縮度だけでなく、粒子の大きさ(粒径)にも依存します。もし熱中性子数(フルエンス)と粒径が一定であれば、エッチングによるFT検出速度は高濃縮ウランを含む粒子ほど早くなるため、エッチング時間の制御によって濃縮度別検出が可能です。図7-13は、粒子中のウラン濃縮度とFTが検出されるまでのエッチング時間の関係を示します。濃縮度が高いほどエッチング時間は短くなることが分かります。この図では、エッチング時間を60分とすれば約25%以上、100分とすれば約10%以上の濃縮ウラン粒子が検出されることを意味します。

粒径の小さい高濃縮ウラン粒子と粒径の大きい低濃縮ウラン粒子が混在する場合は、エッチング時間の制御だけでは双方の区別は困難です。この場合は、粒径を比較します。FTの数が同程度であれば、粒径が小さい方が高濃縮であることは明らかです(図7-14)。実試料では、種々の大きさの粒子があるので、粒子を回収する際、吸引フィルターで粒径を大まかに揃えてから分析しています。

このように、FTの形状と粒径を比較するので、より確実に濃縮度別粒子の検出が可能になりました。特に、無数のウラン粒子の中に高濃縮ウラン粒子がわずかに存在する場合でも、それを見逃さず見つけ出すことができます。この後、選択的に検出されたウラン粒子は、TIMS装置に移し、精確な同位体比を測定します。本研究で開発されたFT-TIMS法は、保障措置上極めて重要な手法としてIAEAなどから注目されています。


●参考文献
Lee, C. G. et al., Development in Fission Track-Thermal Ionization Mass Spectrometry for Particle Analysis of Safeguards Environmental Samples, Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, vol.272, no.2, 2007, p.299-302.


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