7-8 IS法による高効率水素製造に向けて

−ブンゼン反応における二酸化硫黄加圧効果の測定に成功−

図7-18 考案したブンゼン反応生成物に対するSO2加圧効果測定法の概要
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図7-18 考案したブンゼン反応生成物に対するSO加圧効果測定法の概要

ブンゼン反応は、二酸化硫黄ガスが水とヨウ素の混合物と気液接触し硫酸とヨウ化水素を生成する反応で、ISプロセスで最も反応機構が複雑であり、プロセス高効率化の鍵となる反応です。生成液は密度に応じて軽液相と重液相に分離します。本研究では捕集液の中に重液相の濃度を維持したままサンプリングし、熱効率算出に有用な組成情報を導くことのできる測定法を考案しました。

私たちは、高温ガス炉を熱源に用いる将来の大規模水素製造法として、ISプロセスの研究開発を進めています。ヨウ素(I)と硫黄(S)を循環物質とする熱化学反応サイクルを用い、炭酸ガスを発生することなく原料である水を分解して水素を製造します。高温ガス炉が発生する900℃の高温の熱を、できる限り高い効率で水素の化学エネルギーに変換することが重要です。

さて、プロセスの中核反応であるブンゼン反応は以下に示す反応です。

 SO+I+2HO→HSO+2HI

生成物である硫酸やヨウ化水素の水溶液を高濃度で得られれば、生成液を水や不純物から分離する後段のプロセスへの投入熱量を低減でき、ISプロセスの高効率化を図ることができます。ルシャトリエの原理から、ブンゼン反応の反応物であるヨウ素の濃度及び二酸化硫黄(SO)の分圧を増大させると反応が生成液側に偏り、高濃度の生成物が得られると予測されます。これまで、ヨウ素濃度向上による高濃度化の研究により、有効な成果を得てきましたが、もう一方のSOの分圧が与える影響についてほとんど知見がなく、さらなる高効率化のために加圧効果の測定が課題でした。

しかし、高濃度のヨウ素が溶解する生成液(重液相)の加圧下における濃度を、精度良く間接的に測定できる手法がありませんでした。例えば、通常の濃度測定に用いられる光学的手法は、吸光係数の非常に高いヨウ素分子に透過光や散乱光が吸収されるために適用できません。また、サンプリングによる直接的な組成分析を行う場合にも、捕集時に起こりうる生成液中の溶存成分の大気中への逃散や、生成液と捕集液との反応による組成変化が課題でした。

そこで、大気への逃散の影響を無視できる範囲に収め、加圧下での反応状態を維持したまま生成液をサンプリングする手法を考案しました(図7-18)。また、捕集液との反応後の組成分析結果から、プロセス熱効率算出に有用な組成情報を導出する解析方法を開発しました。

今回考案した測定法により、さらなる高濃度化のための反応条件の検討が容易になり、ISプロセスの高効率化に向けた研究開発を加速できるようになりました。これまでの予備実験において、反応平衡理論の通りSO加圧に従った生成物濃度の上昇が確かめられ、従来の最高水準濃度のブンゼン反応生成液を得ることに成功しました。


●参考文献
中島隼人, 今井良行ほか, ヨウ素, 二酸化硫黄および水の反応に対する二酸化硫黄分圧の影響, 化学工学論文集, vol.33, no.3, 2007, p.257-260.


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