13-1 核物質を連続的に厳しく管理する

−プロセスモニタリングのアルゴリズム高度化研究−

図13-2 東海再処理施設のタンクデータ

図13-2 東海再処理施設のタンクデータ

溶液移送がない時の、製品(Pu)貯槽タンク13〜15の液位と密度の時間変化。蒸発による液位の低下に対して、密度が上昇しています。

 

図13-3 米国サバンナリバー施設

図13-3 米国サバンナリバー施設

タンクA1及びA2が交互にタンクBにバッチモードで溶液を送り、タンクBからタンクCに、タンクCは抽出器Dに溶液移送します。抽出器Dの出力は連続モードで液位が変化しています。

安全分野における施設運転情報の取扱いとは異なり、施設者による意図的な核物質転用を問題とする保障措置分野では、施設運転情報を規制目的に利用する「プロセスモニタリング(PM)」の研究が、1970年代に開始され、IAEA保障措置への導入は慎重に進められてきています。

IAEA保障措置では、「有意量の核物質(Pu:8kg)の転用を適時に検知する」としていますが、最初に議論されたのは、毎年の物質収支(MB)時にPuの量(損失は8kg以下)を測定し、有意な損失の有無を検定する方法でした。その後、Pu量の時間変化(損失を30日以内に検知)を管理するために、一年を待たずに中間で在庫差(MUF)を測定し、近実時間計量管理(NRTA)による時系列MUF検定方法が議論されました。すべての損失パターンに対して最良な時間に対する検定方法はなく、現在ではいくつかの時系列検定方法が用いられています。

PMの代表的なものとして、再処理施設の溶液槽内の液位,密度,温度を測定する溶液モニタリング装置(SMS)があります。SMSの実測定データとして東海再処理施設のタンクデータを図13-2、米国サバンナリバー施設のタンクデータを図13-3に示します。溶液の受入・送液などに伴う液位の変化状態を自動的に判別し、異常な液位変化があった時に警報で知らせるなど、申告通りの運転を確認する手段として東海再処理施設及び六ヶ所再処理施設に設置されています。

本研究では、NRTAの評価結果を定量的に補完することを目標に、転用シミュレーションによる性能評価,実際の施設からのPMデータとして溶液モニタリングデータを用いたアルゴリズム高度化の実証研究を実施しています。

PM研究の動機は、米国DOE規則によるところが大きく、米国国研にPM研究者がいることから、ロスアラモス国立研究所(LANL)との2年間(2008〜2010)の共同研究として実施しており、東海再処理施設及び米国サバンナリバー施設のデータに対して、本手法の適用と評価を行っているところです。現在までに、実データに仮想的な溶液損失を重畳させ、蒸発による液位低下に対して密度を同時に考慮した多変量解析手法により仮想損失が検知できること、イベントモニタリングにより保持・移送モードの同定を行い、損失量と時間的変化により検知確率がどのように影響を受けるかについて調べました。

本研究の成果が、将来のIAEA保障措置に反映され、我が国の大型再処理施設の保障措置の効率化に寄与することを目指しています。


●参考文献
Suzuki, M. et al., Study on Loss Detection Algorithms Using Tank Monitoring Data, Journal of Nuclear Science and Technology, vol.46, no.2, 2009, p.184-192.


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