14-2 中性子測定器のkeV領域での正確な感度測定を実現

−加速器を利用したkeV領域単色中性子校正場の開発−

図14-4 開発した単色中性子校正場

図14-4 開発した単色中性子校正場

加速器を利用して8keV及び27keV単色中性子校正場を開発しました。新たにスカンジウムターゲットに0〜+50kVの高電圧を供給できる装置を開発することにより、絶縁部でターゲットに入射する陽子ビームのエネルギーが微調整できるようになりました。

 

45Sc(p,n)45Ti反応による中性子発生量の入射陽子エネルギー依存性

図14-5 45Sc(p,n)45Ti反応による中性子発生量の入射陽子エネルギー依存性

45Scの核構造に起因して共鳴が起きるため、入射する陽子ビームのエネルギーにより、発生中性子のエネルギーだけではなく発生量が大きく変化します。このため、目的とするエネルギーの単色中性子を発生させるには、入射陽子エネルギーを微調整することにより、そのエネルギーを中性子発生量のピークに正確にあわせる必要があります。

放射線防護における中性子線の計測は、対象とするエネルギー範囲が非常に広いという特徴があります。一般に中性子測定器の感度には大きなエネルギー依存性があるため、計測の精度向上には、この感度のエネルギー依存性を精度良く測定(校正)しておく必要があります。このために、加速器を用いた単色中性子校正場を数keV〜20MeVのエネルギー範囲で開発しています。特に、数keV〜数十keVのエネルギー領域では、測定器の感度が大きく変化しますが、これまで、このエネルギー依存性を実測で精度良く試験できる施設が国内には存在しませんでした。そこで、8keV及び27keVの単色中性子校正場(図14-4)を開発しました。この校正場では、スカンジウムターゲットに加速した陽子ビームを入射させ、共鳴構造を有する核反応(45Sc(p,n)45Ti反応)を引き起こします。そして、この核反応で発生した単色中性子を利用して測定器の校正を行います。

図14-5に45Sc(p,n)45Ti反応による中性子の発生量と入射陽子エネルギーの関係を示します。多数の中性子発生のピークが存在し、この中の8keV又は27keVのピークに入射陽子エネルギーを正確にあわせて単色中性子を発生させます。ところが、8keVの単色中性子を例とすると、2911keVの入射陽子エネルギーが1keVずれると中性子が発生しなくなります。このため、1keV以下の高精度で入射陽子エネルギーの制御が必要となりますが、加速器本体でこのようなエネルギーの微調整を行うことは困難です。そこで、ターゲットに電圧をかけて、それを微調整する装置を開発することにより、陽子エネルギーを迅速かつ正確に調整できるようにしました。制御室に設置されたパソコンからターゲットにかける電圧を遠隔制御し、ターゲット直前の絶縁部で陽子エネルギーの微調整を行います。これにより、再現性良くかつ安定に目的とするエネルギーの中性子を発生させることに成功しました。

上記工夫を行うことで、世界最高水準の中性子測定器の校正が可能な8keV及び27keVの単色中性子校正場を開発できました。これを用いることにより、keV領域において中性子測定器の正確な感度校正が初めて実現でき、中性子計測の精度向上が可能になりました。


●参考文献
Tanimura, Y. et al., Construction of Monoenergetic Neutron Calibration Fields Using 45Sc(p,n)45Ti Reaction at JAEA, Radiation Protection Dosimetry, vol.126, 2007, p.8-12.


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