2-6 地下水の流れを効率的にモデル化・解析する!

−複雑な地下水流動場の効率的なモデル化・解析を目指したシステムの開発−

図2-15 GEOMASSシステムの作業フロー

図2-15 GEOMASSシステムの作業フロー

GEOMASSシステムの作業は、まずEarthVision®を用いて地質構造モデルを作成します。作成した地質構造モデルに調査研究で得られた水理パラメータ(透水係数など)を設定した後に、Frac-Affinityを用いて水理地質構造モデルの作成及び地下水流動解析を行います。地下水流動解析の結果はEarthVision®によって可視化されます。

 

図2-16 感度解析結果に基づく水頭分布

図2-16 感度解析結果に基づく水頭分布

断層に与える透水係数を変えることでいくつかの解析ケースを設定しています。(a)はすべての断層が透水異方性を有する場合,(b)は北北西走向の断層が高透水性の場合,(c)は東西走向の断層が高透水性の場合の解析結果を表しています。

高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発において、地下深部における地下水の流れを評価するための手法を整備することが重要となります。特に地下深部の岩盤を対象に現実的な地下水流動場を表現するためには、岩盤中の地下水流動に与える影響が大きい断層や割れ目などをモデル化し、数値解析を行うことが重要となります。しかしこのモデル化・数値解析は水理地質構造が複雑になるほど多大な時間・労力を必要とします。そこで私たちはこれらの問題を解決するための手法であるGEOMASS(Geological Modelling Analysis and Simulation Software)システムを1997年度から開発してきました。図2-15にGEOMASSシステムの作業フローを示します。本システムの特徴としては、数値解析作業の中で多くの労力を必要とする空間領域の離散化を、地質構造モデルに基づき自動で行えるなど、モデル化作業から数値解析までの作業が一体化されており、作業労力の節減が可能であることが挙げられます。

超深地層研究所計画では、地上からのボーリング調査結果及び研究坑道掘削に伴う調査研究結果に基づき、本システムを用いて地質構造モデル,水理地質構造モデルを更新するとともに、地下水流動解析を実施しました。図2-16に更新したモデルを用いた感度解析結果を示します。断層に与える透水係数を変えることで、水頭分布に違いが生じることから、断層が地下深部の地下水流動場に影響を及ぼす主要な要素であることが明らかになりました。これにより、本システムを用いることで、モデル化・解析を通じて重要かつ不確実な要因を抽出し、それを把握するための次の調査計画の立案に迅速かつ効率的に移行できることが明らかになりました。

また、研究坑道掘削に伴う研究坑道への湧水量を予測し、実測値との比較検討を通じて、研究坑道掘削工事における湧水対策や設計変更などの様々なニーズに対して、地下水流動の観点で必要な情報を適切かつ迅速に提供できることを確認しました。

本システムの構築により地質構造モデルの構築から水理地質構造モデルの構築及び地下水流動解析までの一連の作業に必要な労力と時間を大幅に(数週間〜数ヶ月が数時間〜数日にまで)節減することが可能となり、モデルの更新に対して迅速な対応が可能となりました。また迅速な地質環境モデルの構築により地質環境特性を把握する際に、調査や地下施設掘削工事と、地質環境モデルの構築を有機的に組み合わせることが可能となりました。

今後も本システムの適用性確認及び必要に応じた改良を継続していく予定です。


●参考文献
Ohyama, T. et al., GEOMASS : The Application to Characterizations of Groundwater Flow in the Mizunami Underground Research Laboratory Project in Tono Area, Proceedings of 36th International Association of Hydrogeologists congress (IAH 2008), Toyama, Japan, 2008, p.807-815, in CD-ROM.


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