3-8 大出力ジャイロトロンの高繰り返し出力の成功

−ITERの実験入射を模擬して−

図3-19 ITER用高周波プラズマ加熱装置 ジャイロトロン

図3-19 ITER用高周波プラズマ加熱装置 ジャイロトロン

左はジャイロトロン外観写真、右はその断面です。ジャイロトロンは全長3mの高周波発生装置です。電子銃より放出される電子ビームが強磁場中を通過するときに強力な高周波を生成します。

 

図3-20 ジャイロトロン高繰り返し運転

図3-20 ジャイロトロン高繰り返し運転


ジャイロトロンとはマイクロ波と呼ばれる高周波を高出力で生成する装置です(図3-19)。高真空に保たれたその内部で回転電子ビームを生成し、約80keVまで加速した電子ビームが、強磁場中を通過するときに高周波エネルギーに変換されます。ITERでプラズマ中の電子を加熱するのに必要な170GHzという高い周波数を得るために超伝導マグネットを用いて7Tという強力な磁場を印加しています。

私たちはITER用ジャイロトロンの開発のために様々な先進技術を開発してきました。代表例としてエネルギー回収技術によるエネルギー変換効率の飛躍的な向上、出力窓に人工ダイヤモンドを採用することによる世界で最初の長パルス1MW発振の成功などが挙げられます。これらの技術開発により、2007年に世界で初めてITERで要求される出力1MW,エネルギー変換効率50%以上,運転時間500秒以上という条件を同時に満たすことに成功しました。これによりジャイロトロンがITER及び核融合炉において有用な加熱装置であることを明確に示すことができました。

ITERでは400秒間プラズマを保持し、30分間休止するという繰り返し運転が予定されています。これまではITERにおける1回のプラズマ保持時間である400秒以上ジャイロトロンの運転を持続することに重点が置かれていましたが、実際にはこの運転を30分ごとに繰り返すことが要求されます。その場合、ジャイロトロン内部の真空度や、電子を生成する電子銃の状態が30分で初期状態に戻ることが重要です。特に電子銃は電子を放出するたびに温度が変化し表面状態が微妙に変化するため、ショット後一定時間が経過しないとショット前の状態に戻りません。そこでショット中の電子銃の温度変化を最小に抑え短い時間で電子銃の状態をショット前の状態に戻すため、ショット中に印加する磁場,電圧,電子銃を加熱するヒーター電流のリアルタイム制御を行い電子銃温度と電子ビームの最適化を行いました。この結果、図3-20に示すように、5時間もの間400秒という長時間運転を30分間隔で行うことに成功しました。これは世界で初めて達成した、長時間繰り返し運転であり、私たちが開発したジャイロトロンがITERでの実用に十分耐えうることを示しています。


●参考文献
Kajiwara, K. et al., Long Pulse and High Power Repetitive Operation of the 170GHz ITER Gyrotron, Plasma and Fusion Research, vol.4, 2009, p.006-1-006-3.


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