7-1 大規模模擬実験に頼らず核設計予測精度を確認する

−複数の臨界実験を活用した新しい予測精度評価手法の開発−

図7-3 拡張バイアス因子法の特徴

 

(a)従来の方法 (b)拡張バイアス因子法

 

図7-3 拡張バイアス因子法の特徴

単一のモックアップ実験を活用する従来方法(a)では、実験の模擬性が低い場合、炉心性能を確認することが難しくなります。一方、新たに考案した拡張バイアス因子法(b)では既存施設で取得した複数の実験からなる実験群から模擬性の高いモックアップ実験に相当する実験を導出することが特徴です。

 

図7-4 新しい原子炉炉心設計へのFCA臨界実験の活用

(c)革新的水冷却炉 (d)FCA

 

図7-4 新しい原子炉炉心設計へのFCA臨界実験の活用

革新的水冷却炉(c)は、冷却材ボイド率を炉心内で大きく変化させることにより増殖を目指した新しい原子炉です。FCA(d)においてボイド率が異なる状況を部分的に模擬した複数の体系で実験データを取得して、拡張バイアス因子法を適用した結果、従来の方法に比べて、炉心性能を高精度で評価することができました。

新しい原子炉を開発するためには、炉心性能を精度良く予測する必要があります。炉心性能は、基礎データである核データをもとに原子炉での中性子の振る舞いを解析する計算コードにより予測します。開発する原子炉と同規模の模擬性の高いモックアップ実験を行えば、実験値と計算値を比較して、設計値の予測精度を確認できます。しかし、既存の施設で行える実験内容には限界があり、模擬性の低い実験にならざるを得ないため、炉心性能を確認することが難しくなります。また、新規施設で模擬性の高いモックアップ実験を行うには多額の経費が必要となり、その実施は困難な状況にあります。

私たちは、このような困難な状況を克服するため、既存施設で行われた複数の実験からなる実験群をモックアップ実験の代替として活用するという独創的な発想により、実規模のモックアップ実験が実施できなくても予測精度を確認できる新しい不確かさ評価手法(拡張バイアス因子法)を創出しました。この方法では、実験値の分散を考慮しつつ、設計値と実験解析値に含まれる核データと解析手法に起因する共分散を用いて、設計炉心と実験群の相関が最大になるように実験群を選択・活用して、設計値の予測精度の評価とその向上を図ることができます(図7-3)。

拡張バイアス因子法により実験群を活用するため、これまで見過ごされてきた実験値間及び実験解析値間の共分散の現実的な評価方法を新たに開発し、異なる実験値間や異なる炉心間の共分散を評価する技術体系を構築しました。これに基づき、既存施設の高速炉臨界実験装置(FCA)で取得した複数の体系の実験データを活用して、新しい原子炉の設計に拡張バイアス因子法を応用しました。この結果、同法が炉心性能の予測精度の評価とその向上に有効であることを実証しました(図7-4)。

新しい原子炉を開発する時に、拡張バイアス因子法を用いて炉心性能の誤差要因を分析することによって、新規実験の要否に関する判断、誤差の低減が必要な実験、解析手法の抽出が可能となります。以上の研究開発成果は、効果的な開発計画の立案及び開発に必要な時間やコストの削減に寄与するものとして活用できます。

なお、一連の研究開発は、「第41回(平成20年度)日本原子力学会賞(技術賞)」を受賞し、高く評価されています。


●参考文献
Kugo, T. et al., Prediction Accuracy Improvement of Neutronic Characteristics of a Breeding Light Water Reactor Core by Extended Bias Factor Methods with Use of FCA-XXII-1 Critical Experiments, Journal of Nuclear Science and Technology, vol.45, no.4, 2008, p.288-303.


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