7-3 再処理の技術基盤を支えるデータ集の完成

−基礎から実燃料試験までを網羅する「再処理プロセス・化学ハンドブック第2版」−

図7-7 使用済MOX燃料(41GWd/tHM)の溶解試験結果

図7-7 使用済MOX燃料(41GWd/tHM)の溶解試験結果

燃料の溶解が進むにつれ溶液中のウラン濃度の上昇, 硝酸濃度の下降が観察されました。クリプトンの放出とウラン濃度の上昇とは、きれいな相関があることが確認されました。

 

図7-8 使用済燃料の発熱量の比較

拡大図(151KB)

図7-8 使用済燃料の発熱量の比較

軽水炉ウラン燃料,軽水炉MOX燃料,高速炉MOX燃料,高速炉MA添加MOX燃料について使用済燃料1t当たりの発熱量を例示しました。

ピューレックス法をベースとする使用済燃料の湿式再処理法は、これまで各国の再処理施設で操業実績があり、また我が国においても青森県六ヶ所村に大型再処理施設が建設され操業運転の段階を迎えています。

将来想定される高燃焼度の軽水炉燃料や混合酸化物(MOX)燃料の再処理では、処理される燃料に含まれる核分裂生成物やプルトニウムの量が増大するため、使用済燃料の硝酸への溶解性や抽出分離性能への影響を考慮する必要があります。また同時に、経済性の向上や放射性廃棄物の低減の観点からも、今後の再処理技術の研究開発は一層重要なものとなります。研究開発を進めていく上で、これまでに蓄積された基盤データの集成は、非常に意義のあるものです。

私たちは、主に燃料サイクル安全工学研究施設(NUCEF)において、湿式再処理技術の基盤となる化学プロセス及び溶液化学に関する試験研究を進めてきています。これまでに使用済軽水炉燃料や使用済MOX燃料を実際に用いた溶解試験(図7-7)及び抽出分離試験を実施しており、そこで得られたデータ及び国内外の文献情報をまとめ、「再処理プロセス・化学ハンドブック」として2001年に第1版を、更に改訂を加え2008年に第2版を刊行しました。

ハンドブックには、まず溶液化学の基礎データとして溶液密度,粘度等の基礎物性,アクチノイドイオンの吸収スペクトルなどについて記載しています。

使用済燃料の溶解特性及び溶解オフガスに関してNUCEFでの溶解試験の結果についてまとめています。いくつかの燃焼度の燃料を用いた試験でのウラン及び硝酸の溶液中濃度変化を解析モデルと比較しているほか、不溶解残渣の分析結果についても触れています。

抽出特性に関しては、U,Pu,Np等、主要な放射性核種の分配挙動や酸化還元反応についてまとめたほか、私たちが開発、公開した抽出プロセス解析コードPARCの概要を示しました。更にNUCEFで実施した抽出分離試験と計算解析が良く一致したことを示しました。

ハンドブックではこれらのほかに、研究開発に必要なデータとして、使用済燃料の元素組成や発熱量(図7-8)、安全上重要なプルトニウムポリマーや溶媒劣化等の情報を掲載しました。

今後、再処理に関する知識基盤のひとつとして広く活用され、再処理施設の円滑で安全な操業と次世代に向けた技術開発に役立てられることが期待されています。


●参考文献
湿式分離プロセス化学研究グループ, 再処理プロセス・化学ハンドブック第2版, JAEA-Review 2008-037, 2008, 702p.


| | | | |