11-3 研究施設等廃棄物に含まれる放射性核種の分析技術

−廃棄物分析の簡易・迅速法の分析指針−

図11-6 廃棄物分析の基本フロー
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図11-6 廃棄物分析の基本フロー

各廃棄物試料は、非破壊γ線測定を行ったあと、核種の性状に応じて加熱,酸浸漬,アルカリ溶融,マイクロ波加熱による前処理を行います。前処理により溶液化した試料は、固相抽出剤等を用いて化学分離を行い、α線やβ線等の放射線測定を行います。また半減期が非常に長い核種は、質量分析法を適用して放射能を定量します。

 

図11-7 多重γ線測定装置

図11-7 多重γ線測定装置

非破壊γ線測定では、60Co等に起因するバックグラウンド計数の増加により、ほかの核種の検出限界が上昇することが問題でしたが、多重γ線測定法を適用することにより、検出感度を大きく向上させることができました。

 

図11-8 固相抽出樹脂による核種分離

図11-8 固相抽出樹脂による核種分離

α・β・X線核種の分離に固相抽出剤を適用し、分離の迅速化と廃液等の二次廃棄物発生量の低減を図りました。この写真は、Niの固相抽出を行っている様子を示しており、赤く発色している部分にNiが抽出されています。

原子力施設等から発生した放射性廃棄物を安全に処分するためには、その中に含まれる放射性核種の種類と濃度を把握する放射能評価が不可欠です。私たちは合理的で信頼性の高い放射能評価手法を確立するため、非破壊γ線測定や破壊分析(放射化学分析)により廃棄物試料中の核種組成・濃度等のデータの収集を進めています。

放射能評価が必要となる放射性核種は、予備検討の結果29核種に絞り込まれていますが、そのうち21核種は、放射化学分析が必要なα・β・X線を放出する核種です。これらの核種を従来の放射化学分析法で分析した場合、試料の溶解処理に長時間を要することや、化学分離が煩雑で二次廃棄物発生量が多いこと、半減期の非常に長い核種の測定に長時間を要することなどが問題となっていました。

そこで私たちは、浅地中処分に相当する比較的放射能濃度の低い多数の廃棄物試料を効率良く分析することを目的に、廃棄物分析の基本フローを作成するとともに、分析作業の迅速化に有効な要素技術の開発を行ってきました(図11-6)。

非破壊γ線測定については、Ge検出器4台で同時測定を行う多重γ線測定法を適用することにより測定を高効率化し、従来、湿式分析が必要であった核種の非破壊分析を可能としました(図11-7)。溶融固化体等の難溶解性試料の溶解処理にはマイクロ波加熱分解法を適用し、核種の保持性を考慮した迅速な溶解法を開発しました。また、α・β・X線核種の分離には、従来の溶媒抽出法に替わる固相抽出法を適用することで、分離を迅速化するとともに廃液等の二次廃棄物発生量を低減することができました(図11-8)。そのほか、測定法についても、レーザー共鳴電離と回転電場偏向を組み合わせた飛行時間型質量分析装置を新規に開発するなどした結果、従来法と比較し、分析フロー全体で所要時間を1/3程度に短縮することができました。

これらの成果を取りまとめた分析指針を用いて、今まで以上に廃棄物放射能データを効率的に取得できることが期待されます。


●参考文献
亀尾裕ほか, 研究施設等廃棄物に含まれる放射性核種の簡易・迅速分析法(分析指針), JAEA-Technology 2009-051, 2009, 81p.


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