14-3 硝酸ウラニル六水和物結晶の高純度化に向けて

−プルトニウム−セシウム硝酸化合物の物理化学的特性−

図14-6 生成したPu-Cs硝酸化合物

図14-6 生成したPu-Cs硝酸化合物

燃料溶解液から生成し、ガラスフィルタの上に回収した淡緑色の物質がPu-Cs硝酸化合物です。得られた化合物を使用して、物理化学的特性を把握するための各種基礎データを取得しました。

 

図14-7 Pu-Cs硝酸化合物の熱分析

図14-7 Pu-Cs硝酸化合物の熱分析

Pu-Cs硝酸化合物の熱的安定性を確認するため、熱分析を行いました。約245℃よりPu-Cs硝酸化合物の重量が減少していることが確認されました。この結果より、UNH結晶の精製運転時、Pu-Cs硝酸化合物は固体不純物としてUNH結晶に同伴することが示唆されました。

私たちは、次世代再処理技術として高速炉燃料溶解液に含まれているUを粗分離するために晶析法の研究開発を進めています。晶析は、化学,食品及び医薬品の分野において、製品の分離や精製に広く用いられている技術です。原子力の分野では、1980年代にドイツのカールスルーエ原子力研究センター(KfK)において溶媒抽出法により燃料溶解液から分離したU製品の精製を目的とした研究が行われていました。この晶析法は、新たな試薬を必要とせず、溶液の温度制御のみでUを硝酸ウラニル六水和物(UNH)結晶として分離・回収することができます。高速炉燃料溶解液は、KfKにおいて適用されていた溶媒抽出後のU製品に比べてPuや核分裂生成物(FP)が多量に含まれているため、これらの元素の挙動を把握することが重要です。これまでの研究から、晶析工程においてPuとCsが化合物として析出することが示唆されており、回収されるUNH結晶の純度の低下、また回収後のU製品の保管及び燃料製造時の作業員の被ばくが懸念されます。そこで、この化合物の生成抑制及びUNH結晶からの除去を目的とした物理化学的特性を把握する研究を進めています。

Pu-Cs硝酸化合物の生成挙動試験は、高レベル放射性物質研究施設(CPF)で実施しました。この試験により、淡緑色のPu-Cs硝酸化合物を調製しました(図14-6)。この化合物は、母液の硝酸濃度の増加に伴い、生成量が増加することが明らかとなりました。生成したPu-Cs硝酸化合物の元素分析及びX線回折より、CsPu(NOの化学式であることを突き止めました。また、UNH結晶は60〜100℃の温度領域において精製運転が検討されていることから、このPu-Cs硝酸化合物の熱的安定性を調べました。この熱分析の結果(図14-7)により、Pu-Cs硝酸化合物は約245℃までは重量減少がなく安定に存在することから、UNH結晶の精製工程では、固体として存在することが示唆されました。

これらの研究により得られたデータは、晶析工程におけるPu-Cs硝酸化合物の生成抑制及びUNH結晶からの除去に大きく寄与できるものと考えています。

本研究は、文部科学省原子力システム研究開発事業 「晶析工程における結晶精製技術に関する研究開発」の成果の一部です。


●参考文献
Nakahara, M. et al., Preparation and Characterization of Dicesium Tetravalent Plutonium Hexanitrate, Journal of Alloys and Compounds, vol.489, issue 2, 2010, p.659-662.


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