2-2 熱-水-応力-化学連成解析モデルの構築を目指して

−緩衝材の地球化学プロセスに着目した工学規模の人工バリア試験と解析評価−

図2-4 地層処分における工学規模の人工バリア試験の概略図

図2-4 地層処分における工学規模の人工バリア試験の概略図

試験体は、コンクリート支保を想定したモルタルブロック,圧縮ベントナイト製の緩衝材及び廃棄体を模擬したヒーターから構成されています。

 

図2-5 時間の経過及び温度変化に伴う含水比分布の変化

図2-5 時間の経過及び温度変化に伴う含水比分布の変化

連成解析により、人工バリア試験における時間経過及びヒー ターの温度変化に伴う緩衝材中の水分変化を良く再現しています。

 

 

図 2-6 試験体中での鉱物の溶解沈殿

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図2-6 試験体中での鉱物の溶解沈殿

緩衝材とモルタルとの接触界面において生じる鉱物の溶解や析出物の分布を連成解析で表現できることを確認しました。

高レベル放射性廃棄物の地層処分における人工バリア定置後の廃棄体周辺では、廃棄体の発熱,人工バリア内への地下水の浸み込み,緩衝材の膨潤,間隙水組成の変化など、熱的,水理学的,力学的及び地球化学的プロセスが相互に影響を及ぼし合うこと(連成挙動)が予想されます。これらの人工バリア内で生じる連成挙動は長期間にわたることから、数値解析によるアプローチが有効な評価手法になります。そこで私たちは、このような人工バリア内で生じる連成現象を定量的に把握することを目的に、世界に先駆けて化学を含めた4変数の連成を目指した熱‐水‐応力‐化学連成挙動解析モデルの開発を行っています。

地層処分においては処分坑道の力学的安定性を確保するために設置されるコンクリート支保によって高いアルカリ性の水が発生し、この水が緩衝材に浸み込むことが想定されます。本研究では、特にこの高いアルカリ性の水による緩衝材を構成する鉱物の溶け出し、二次鉱物の沈殿といった地球化学プロセスに着目した連成解析を実施しました。また、連成解析の信頼性を確認するため、約800日間にわたる地層処分を模擬した工学規模の人工バリア試験(図2-4)をあわせて実施し、この人工バリア試験結果と連成解析結果との比較を行いました。

図2-5は連成解析及び人工バリア試験によって得られた緩衝材中の水分変化を示したものです。両者の結果の一致は開発中の連成解析モデルの信頼性の高さを示すものといえます。地球化学プロセスについては、図2-6に示すようにモルタル中においてセメント水和物のポルトランダイドが溶解し、高いカルシウム濃度の水が緩衝材中へ浸み込むことを解析によって予測しました。また、緩衝材の中に含まれるカルセドニ(玉髄)と呼ばれる鉱物が溶解する解析結果が得られ、人工バリア試験で認められたモルタルとの接触界面近傍での析出物がC-S-Hゲル(セメント水和生成物のカルシウムシリケート水和物)である可能性を示しました。これらの連成解析結果は人工バリア試験の結果と整合するものでした。

本研究を通じて、開発中の連成解析モデルが、緩衝材とコンクリート支保の地球化学プロセスの相互作用を考慮した連成現象の評価に適用できる可能性を示すことができました。今後は本研究で得られた知見に基づき、原位置人工バリア試験の計画に反映していく予定です。



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