2-8 大深度立坑の施工管理指標の構築を目指して

−大深度立坑掘削のための岩盤挙動分類の提案−

図 2-17 幌延深地層研究所の立坑掘削における初期変形率と断面変形率の関係

図2-17 幌延深地層研究所の立坑掘削における初期変形率と断面変形率の関係

点線の範囲(IからV)は、一般的な水平坑道の施工での関係を示し、実線の範囲(IからIII)は、幌延の立坑での実測結果を既往の結果と比較して、新たに設定した区分です。

 

 

表2-2 立坑掘削における岩盤挙動分類

図2-17で示した変形量の三つの区分について、岩盤の変形特性と非弾性変位の割合の範囲を分析しました。変形量が区分IIIの範囲になると岩盤の非弾性挙動が支配的となることが判断できます。

表2-2 立坑掘削における岩盤挙動分類


地下深部の坑道掘削では、地上からの調査によって掘削対象となる岩盤の性状や地圧の大きさと方向性を十分に把握することは困難です。そのため、坑道の掘削に伴って、岩盤の観察や坑道壁面の変形の計測などを実施し、設計の支保部材量を逐次見直し、原位置の岩盤や地圧の性状に合わせた支保構造を構築していきます。一般的な坑道の施工では、掘削直後の変形量(初期変形率)と坑道が安定するまでに生じる変形量(断面変形率)の関係を分析し、掘削直後の計測結果から支保と坑道周辺岩盤の力学的安定性を予測しています。地層処分では、坑道周辺岩盤の透水性の上昇した領域を、安全評価における許容範囲内に抑制することが求められます。よって、地層処分場の坑道の施工では、岩盤の変形の計測結果から、坑道の力学的安定性だけでなく、岩盤の透水性の変化の程度やその拡がりを逐次予測・評価できる指標が必要となります。

本研究では、幌延深地層研究所において、換気立坑(内径4.5m)と東立坑(内径6.5m)の掘削に伴う岩盤の変形計測と原位置岩盤の変形特性の調査試験を実施してきました。対象とした立坑は、標準的な掘削工法であるショートステップ工法で施工していますが、掘削後、比較的早い施工段階において剛性の高い覆工コンクリートを壁面全周に構築していきます。その結果、通常の水平坑道の施工に比べて、岩盤の変形量を抑制していること が明らかとなりました。そこで、一般的な水平坑道の指 標を参考にして、その掘削直後の変形量と坑道がおおむね安定する際の変形量の関係について三つの区分(IからIII)を提案しました(図2-17)。掘削に伴う坑道周辺岩盤の透水性の変化は、岩盤の非弾性的な変形によって顕著に生じます。そのため、設定した三つの区分に対して、計測変形量に対する非弾性変形量の割合や、原位置岩盤の変形特性との関係を分析しました。その結果を、立坑掘削における岩盤挙動分類としてまとめました(表2-2)。同分類により、掘削直後の計測結果から、地上からの調査結果に基づく事前の想定を超える岩盤の非弾性的な変形の発生の有無を予想し、追加の支保部材量の投入の必要性を迅速に判断することができます。今後は、岩盤の非弾性的な変形量と透水性の変化の程度やその領域の幅との関係を調査し、岩盤の透水性の変化の程度やその範囲を予測・評価することができる施工管理指標を構築していく予定です。


●参考文献
津坂仁和, 堆積軟岩における立坑掘削の内空変位計測に基づく岩盤挙動分類の提案, 土木学会論文集F, vol.66. no.1, 2010, p.181-192.


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