4-1 水の新たな姿を明らかに

−水の不思議な性質の解明にまた一歩前進−

 

図4-2 高温高圧下X線回折実験の原理と装置の外観
拡大図(106KB)

図4-2 高温高圧下X線回折実験の原理と装置の外観

左は実験に用いたキュービック型マルチアンビルプレスの試料付近の模式図で、右は装置の写真です。

 

図4-3 計算と実験から得られた動径分布関数

図4-3 計算と実験から得られた動径分布関数

密度1.0g/cmでの動径分布関数 gXY(r)(X,YはOまたはH)の温度変化です。横軸は動径 r(Å単位)であり、計算と実験から得られた動径分布関数をそれぞれ実線と点線で示しました。見やすくするために温度の異なるデータは縦軸を二つずつずらしています。

近年、地球深部にも含水鉱物として水が存在し、マグマの生成などにも水が深くかかわっていることが分かってきました。その役割を理解するには、地球深部の条件、すなわち高温高圧条件での水の振る舞いを知ることが大切です。室温常圧付近の水は、実は、ほかの液体とは違った性質を示す特殊な液体です。例えば、普通の液体は温度の上昇とともに膨張しますが、水は0℃から約4℃までは収縮します。また、同じような重さのほかの分子からなる液体と比べ、非常に高い温度まで沸騰しません。これは、水は隣り合う水分子の間に水素結合を形成するため、液体中の分子配列に固体状態である氷に類似した秩序が残るためと考えられています。しかし、このような特殊な配列が高温高圧下でどのように変化するのかは、よく分かっていませんでした。

私たちは、大型計算機を用いた第一原理分子動力学計算から、密度を一定に保ちながら温度を上げていくと、この特殊な配列がなくなることを明らかにしました。さらに、大型放射光施設SPring-8で、1万気圧近い圧力を加えて密度を通常の水と同じに保ったまま400℃以上の高温条件を実現してX線回折実験を行うことに成功し(図4-2)、このような配列を実験で確かめることができました(図4-3)。この温度圧力は地球内部の深さおよそ30kmの条件に対応します。計算結果の詳細な解析から、配列の変化は、水分子の回転運動が通常の水よりも数100倍も速くなる ために起こることも分かりました。本成果は、高温高圧の地球内部で物質の分解・合成に重要な働きをしていると考えられている水の役割の解明に役立つと期待されます。

現在、開発を進めているJ-PARCでの高温高圧中性子実験では、X線では調べられない水素も観察可能となるので、今後、地球環境の解明に向けた研究が更に進むと期待されます。

本研究は、文部科学省科学研究費補助金(No.20103004)「高圧下における水をはじめとした液体の構造変化」及び(No.20103005)「高圧下における含水鉱物、マグマ、水の量子シミュレーション」の成果の一部です。


●参考文献
Ikeda, T., Katayama, Y. et al., High-Temperature Water under Pressure, Journal of Chemical Physics, vol.132, issue 12, 2010, p.121102-1−121102-4.
Katayama, Y. et al., Structure of Liquid Water under High Pressure Up to 17 GPa, Physical Review B, vol.81, issue 1, 2010, p.014109-1−014109-6.


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