8-8 簡便・低コスト新規回収技術:エマルションフロー法

−放射性廃液処理技術から排水浄化技術への展開−

図8-18 エマルションフロー法の概要

図8-18 エマルションフロー法の概要

ヘッド部で微小な液滴を発生させることで、カラム部でエマルションフローが発生し、相分離部で消滅します。

図8-19 エマルションフロー装置の外観と稼働中の様子

図8-19 エマルションフロー装置の外観と稼働中の様子

エマルションフロー装置の外観(左上)と、ヘッド部での微小液滴の発生、カラム部でのエマルションフローの発生及び相分離部でのエマルションフローの消滅の様子(破線枠内)です。

 

図8-20 粒子成分回収の例

図8-20 粒子成分回収の例

酸化鉄の微粒子で懸濁した水を灯油と振とうしたあと、静置すると、微粒子が液液界面に集合します。

 

図8-21 塗料廃液の浄化例

図8-21 塗料廃液の浄化例

顔料粒子と界面活性剤の同時除去により、塗料廃液が浄化されます。

エマルションフロー法とは、油のような水と混じり合わない溶媒を用いて、水に溶けている溶存成分と水を懸濁させている粒子成分の両方を、コンパクトでシンプルな装置を使って、低廉,簡便,迅速に回収・除去できる新しい手法です。エマルションフロー法では、金属イオンなどの溶存成分は液液抽出(溶媒抽出)で、懸濁物などの粒子成分は液液界面への凝集を利用して回収します。溶存成分と粒子成分の同時回収も可能です。

液液抽出とは、水に溶けている成分を油のような水と混じらない溶媒に抽出する方法のことで、溶媒抽出とも呼ばれ、工業的に広く利用されています。エマルションフロー式の液液抽出法では、ヘッド部で微細な液滴を発生させることで、カラム部で水と油が混じり合った乳濁流エマルションフローが発生し、これが相分離部に達すると消滅します(図8-18,図8-19)。すなわち、送液のみで効率的に水と油を混合・乳化するので、撹拌・振とうなどの機械的な外力を必要とする従来法(ミキサーセトラー等)よりも、格段に低コストで簡便です。また、フローを利用して水と油を強制的に相分離するので、コンパクトな装置で迅速処理が可能です。

エマルションフロー式液液抽出法は、原子力施設内の設備・装置の解体撤去に伴って発生する除染廃液の浄化(放射性物質の除去)を目的に開発され、実用に向けて発展を遂げてきました。最近では、原子力以外にも、工場からの排水の浄化や廃液からのレアメタルの回収などに利用できる簡便・低コストな新規回収・除去技術として、様々な産業分野で注目を集めています。

エマルションフロー方式は、懸濁物のような粒子成分の回収にも利用できます。懸濁した汚染水に灯油を入れて振とうすると、図8-20に示すように、懸濁粒子が水と油の間の界面に集まります。これをエマルションフロー方式で行うことで、フィルタや凝集剤を使わずとも、効率的に水の中の粒子成分を回収することができます。例えば、ひとつの例として、自動車用水性塗料の廃液の浄化に適用すると、廃液に含まれる顔料粒子のほぼ100%を除去することができます(図8-21上)。加えて、塗料廃液に溶存している界面活性剤も、同時に約90%を除去できます。界面活性剤はいわゆる石鹸ですので、処理前の廃液は強く発泡しますが、処理後は発泡がなくなり、界面活性剤が除去されたことが分かります(図8-21下)。


●参考文献
長縄弘親ほか, 向流方式エマルションフロー連続液液抽出装置, 特開2010-082531, 公開特許公報.
長縄弘親ほか, 溶液中粒子成分の連続回収方法, 特開2010-082530, 公開特許公報.


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