9-2 高温ガス炉水素製造システムの安定運転に向けて

−水素製造施設の異常時に原子炉に影響を与えない運転制御−

図9-5 HTTR-IS水素製造システム

図9-5 HTTR-IS水素製造システム

原子炉で加熱された1次冷却材(ヘリウムガス)は、中間熱交換器を介して2次冷却材(ヘリウムガス)に原子炉の熱を伝えます。加熱された2次冷却材は、IS水素製造施設に輸送され、水素製造の熱源として用いられます。

 

図9-6 負荷変動を緩和するシーケンス制御

図9-6 負荷変動を緩和するシーケンス制御

水素製造施設での負荷変動を緩和するシーケンス制御を考案しました。

 

図9-7 負荷変動の緩和効果(解析)

図9-7 負荷変動の緩和効果(解析)

考案したシーケンス制御により、蒸気発生器出口温度の上昇を目標値以下に緩和できることを確認しました。

高温ガス炉は950℃という高温の熱を取り出すことができることから、発電はもとより、水素製造,化学工業の熱源など、多用途にわたる利用が想定され、二酸化炭素排出量の削減に大きく貢献することが期待されています。これまで、化学プラントの熱源に原子炉を利用した例は世界でまだないことから、私たちは大洗研究開発センターのHTTRを用い、世界で初めて原子炉の熱を用いて水素製造を行うシステム(HTTR-IS水素製造システム)の建設を計画しています(図9-5)。

高温ガス炉と水素製造施設の接続時の課題のひとつに、水素製造施設での機器の故障,人的操作ミスなどにより生じる化学反応器の交換熱量変動(負荷変動)が原子炉に与える影響を防止することがあります。この負荷変動は2次冷却材での温度変動の原因となり、この温度変動は中間熱交換器を介して1次冷却材へ伝播します。高温ガス炉では構造材の健全性を保持する観点から1次冷却材の温度変動を制限しており、この温度変動が原子炉スクラム設定点を超える場合には原子炉が自動停止します。高温ガス炉水素製造システムの安定な運転には、水素製造施設の異常時に生じる負荷変動を緩和することが不可欠です。これまでに、蒸気発生器と放熱器を用いた負荷変動緩和システムの設計,水素製造施設の異常時におけるプラント過渡挙動を評価するための解析手法の開発を行い、本システムの基本的成立性を確認しました。一方、IS水素製造施設のように、異常時に2次冷却系からの隔離が必要な場合には、負荷変動の大きさや速度が大きいことから従来の手法を適用できませんでした。そこで、2次冷却系の切替弁と蒸気発生器の上部に設置された弁を連動させ、蒸気発生器保有水を冷却することで蒸気発生器出口での冷却材温度変動を緩和する新しい概念を取り入れたシーケンス制御を考案するとともに、運転員の操作の介在を期待せずに蒸気発生器と放熱器間において安定な自然循環を形成するための弁の作動条件を見いだしました(図9-6)。解析の結果、水素製造施設での異常時にも原子炉の安全保護装置や警報装置を作動させることなく、通常運転を継続できることを明らかにしました(図9-7)。今後は、HTTR-IS水素製造システムの設置許可申請時に必要な安全評価に向け、HTTRで取得するプラント過渡挙動に関するデータを用いて解析手法の信頼性を確認する予定です。



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