2-7 広大な地下に作用する力を推定する

−岩盤応力測定の実測値による推定−

図2-17 解析領域及び応力測定を実施したボーリング孔の位置
図2-17 解析領域及び応力測定を実施したボーリング孔の位置

図中の青い四角で囲まれたボーリング孔で複数回測定された局所応力値より広域ひずみを算出しました。次に解析モデルの境界に広域ひずみに相当する変位を与えてMIZ-1号孔における局所応力を算出しました。

 

図2-18 MIZ-1孔における局所応力の測定応力と計算応力との比較

図2-18 MIZ-1孔における局所応力の測定応力と計算応力との比較

計算された応力結果は測定された応力結果の平均的な値を示しており、深度方向の変化も再現できていることが分かります。なおグラフでは、引張を正、圧縮を負として表しております。

高レベル放射性廃棄物の地層処分では、地下深部の数km四方の領域に多数の坑道が掘削されます。建設時及び操業時の坑道の安定性の確保や坑道近傍の岩盤物性が変化する領域の大きさやその変化量を最小化するためには坑道周辺の岩盤応力の状態を評価する必要があります。坑道近傍のごく一部の安定性を評価する場合は、それに見合った狭い領域の応力状態(局所応力)を把握します。数km四方に及ぶ領域の安定性を評価するためには、それを包含するような広範囲の応力場(広域応力場)の把握が重要です。しかし三次元的に広域応力場を把握することは、多大な費用・時間・測定点数を要し現実的ではありません。一方、局所応力は水圧破砕法や応力解放法などの方法で測定が可能です。そこで私たちは以下の(a),(b)に基づき、広域応力場を複数の局所応力の測定結果から算出する方法を提案しました。

(a)広域応力場が、ある領域の応力分布を形成する境界条件である。

(b)ある点の局所応力は、重力により発生する応力と水平方向の地殻の動きにより発生する応力との和である。

なお、(a)について、弾性解析では応力とひずみが比例するので広域応力場の代わりに広域ひずみを算出しました。広域ひずみの計算の手順は以下の(1)〜(3)のとおりです。

(1)地表からの調査結果を基に、対象領域をモデル化し、各要素に岩盤物性を与えます。

(2)基準となるひずみ値を設定し、そのひずみに相当する変位を解析モデルの境界に与えます。解析モデルの領域内では境界に与えた変位に相当する応力が計算されます。

(3)最小二乗法により測定応力が(2)で計算された応力の何倍であるかを計算します。基準となるひずみ値に計算された倍数を乗じ広域ひずみを算出します(図2-17)。

次に、このようにして算出した広域ひずみの妥当性を評価するために、解析モデルの境界に算出した広域ひずみに相当する変位を与えて、MIZ-1号孔沿いの局所応力を算出し、MIZ-1号孔で実施した応力測定の結果と比較しました(図2-18)。計算結果は、測定結果の平均的な値を示しており、深度方向の変化も再現できました。このことから本研究で提案した広域応力場の算出方法と、その方法に基づき算出した広域ひずみはおおむね妥当であることを確認しました。


●参考文献
Tanno, T. et al., Development of Method for Evaluation of Three Dimensional Distribution of in situ Stress State and Preliminary Estimation of Applicability, Rock Stress and Earthquakes: Proceedings of 5th International Symposium on In-Situ Rock Stress (ISRS-5), Beijing, China, 2010, p.521-526.


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