3-3 大電力ミリ波エネルギー伝送効率のITER目標の達成

−ITER電子サイクロトロン加熱電流駆動システムの開発−

図3-8 改良を行った準光学整合器

図3-8 改良を行った準光学整合器

ジャイロトロン出力ビームを2枚のミラーを介して整形し、導波管へ正確に入射させ、高いHE11モード成分を持った伝送ビームを実現します。

 

図3-9 大電力ミリ波長距離伝送系の構成と伝送系前後での伝送ビーム分布と伝播モード成分の一覧

図3-9 大電力ミリ波長距離伝送系の構成と伝送系前後での伝送ビーム分布と伝播モード成分の一覧

長距離伝送系には、複数のマイターベンドと導波管スイッチが設置さ れています。伝送系を介したあとも単一ピークの分布を示す高いHE11モード成分を持った伝送ビームが維持されます。

電子サイクロトロン加熱・電流駆動(EC H&CD)システムは、大電力ミリ波を用いたプラズマの加熱システムであり、ITERの主要な加熱システムになります。 ITERでは、ジャイロトロンが発生させる170 GHz・1 MW出力の大電力ミリ波を、100 mを超える長距離伝送系を介して高効率で核融合プラズマに入射させます。大電力ミリ波の伝送系に用いる大型コルゲート導波管(内径63.5 mm)で高効率の伝送を実現するためには、基本伝播モード(HE11モード)での伝送が必要です。そのため、ITERではHE11モード純度が高い伝送ビームを実現しなければなりません。

そこで、私たちはITER用長距離伝送系を模擬した伝送系を用い、伝送ビームのHE11モード純度を向上させ、大電力ミリ波を高効率伝送する実証実験を行いました。まず、ジャイロトロンからの出力ビームを伝送系に結合する準光学整合器を改良し、HE11モード純度が高い伝送ビームの実現を目指しました。整合器は、図3-8に示すように2枚のミラーを使ってジャイロトロンの出力ビームをコルゲート導波管入口に入射させる装置です。改良した整合器は、ミラーの角度調整の精度を向上することで、HE11モード純度95%の伝送ビームを実現させました。続いて、図3-9に示す全長40 mの長距離伝送系を用いて、長距離伝送による伝播モード成分への影響を評価しました。その結果、HE11モード純度95%の伝送ビームでは、長距離伝送系の出口でHE11モード純度91%を確保できることを確認しました。伝送系途中の機器の影響で4%程度の不要モード(LP02,LP11モード)が発生したものの、ITERのような大規模伝送系においてもHE11モード純度の低下を小さくできることを確認しました。

そして、40 mの長距離伝送系において、HE11モード純度が高い伝送ビームを用いた場合の大電力ミリ波のエネルギー伝送効率を計測しました。計測では、長距離伝送系の終端に接続されたダミーロードで受けた大電力ミリ波のパワーと伝送系各機器で発生した熱損失の計測データをもとに評価を行いました。その結果、40 mの長距離伝送系にて、96%の伝送効率を達成しました。この伝送効率は、ITERの長距離伝送系における伝送効率の目標を超えるものです。


●参考文献
Takahashi, K., Oda, Y. et al., High Power Millimeter Wave Experiment of ITER Relevant Electron Cyclotron Heating and Current Drive System, Review of Scientific Instruments, vol.82, issue 6, 2011, p.063506-1-063506-7.


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