7-5 難分離性マイナーアクチノイドの相互分離に向けて

−疎水性,親水性化合物を併用する新規分離法の試み−

図7-14 DOODA,DGA化合物の構造

図7-14 DOODA,DGA化合物の構造

DOODA,DGA化合物ともに異なるR,R’(C2H5,C8H17のようなアルキル基の総称)を持つ化合物合成が可能です。この中で、親水性化合物はDOODA(C2),TEDGAであり水に可溶です。一方、疎水性化合物はDOODA(C8),(C12),TODGA,TDdDGAで無極性の有機溶媒であるドデカンに溶解します。

 

図7-15 TODGAとDOODA(C8)によるランタノイド抽出分配比と原子番号との関係

図7-15 TODGAとDOODA(C8)によるランタノイド抽出分配比と原子番号との関係

DOODA(C8)とTODGAで異なるLnの抽出特性を示しています。DOODAは低い原子番号のLnである、La,Ce等の元素分配比が高く、一方TODGAは高い原子番号のLnであるErからLuまでの分配比が高くなる傾向を示します。

 

表7-1 各抽出系におけるAm/Cm分離比

それぞれの抽出系で、抽出剤のみでの結果より、水溶性化合物を加えた方が高いAm/Cm分離比を示しています。

表7-1 各抽出系におけるAm/Cm 分離比

*( )内は逆数であるCm/Am比を示しています


高レベル廃液中のMAであるAm及びCmは長い半減期、高い発熱量といった特徴を持っています。これら元素を相互分離して、その性質に従って核変換や地層処分するといった考え方があり、私たちはこのAm/Cmの相互分離の研究に取り組んでいます。化学的性質の酷似するこれら元素の相互分離は大変難しく、実用面で必ずしも満足のいく成果が得られておらず、新しい概念を持つ分離法が期待されています。

私たちは、これまで新規抽出剤のジグリコールアミド(DGA)やジオキサオクタンジアミド(DOODA)の開発を行ってきました。これら化合物は疎水性ばかりでなく親水性の化合物も作成できます(図7-14)。溶媒抽出法が水相、有機相二つの液相からなることに注目し、それぞれの相に開発したアミド化合物を溶解し、両方の分離機能の相乗効果を使って、高いAm/Cm分離比を得ることを考えました。ここで、AmとCmのわずかな性質の違いを系統立てて把握し、MA分離手法を検討するため14種のLnを模擬的に利用しました。

Ln抽出と原子番号との関係を調べると、抽出分配比は一般に右上がりか右下がりの傾向を示しました(図7-15)。これは、抽出剤がLnイオン半径に従って徐々に反応性を変えることを示すものです。この中でAmはネオジム(原子番号60),Cmはサマリウム(同62)に近い分配比を示しました。分離機能の相乗効果を得るためには、図7-15のような逆の傾向を示す二つの化合物を水相,有機相中で同時に利用する必要があります。

この方法を用いて、Am/Cm分離に対し、単独の抽出剤を用いるよりも親水性化合物を併用した抽出系の方がより高い分離比が得られました(表7-1)。ここで、分離比は二つの金属の分配比の比で、値が大きいほど分離性能が高いことを示します。このように、本抽出系において分離の相乗効果が確認されました。より高いAm/Cm分離比があれば、実プロセスにおいて効果的な相互分離を行うことができます。多段抽出の簡易計算の結果からは、分離比3.6で十分な相互分離を達成できることを確認しています。今後は更に有効な化合物の組合せを用いて高い分離比を生み出し、より簡便な核種分離プロセスを構築することを目標にしています。



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