9-3 溶融固化体中の放射性核種分析に向けて

−揮発性核種を含む標準試料作製法の検討−

図9-6 α及びγ線放出核種含有溶融固化体標準試料の作製法

図9-6 α及びγ線放出核種含有溶融固化体標準試料の作製法

241Amや60Coなどのαやγ線放出核種を含有する溶融固化体標準試料は、模擬廃棄物に放射性核種(RI)を添加して1600 ℃で溶融することで作製しました。このとき 固化体の塩基度(CaOとSiOの濃度比)を低く制御することで、揮発しやすい137Csを固化体中に残存させることができます。

 

図9-7 14C,36Cl含有溶融固化体標準試料の作製法

図9-7 14C,36Cl含有溶融固化体標準試料の作製法

14Cや36Clの溶融固化体標準試料は、熱中性子照射による核反応を利用して14C又は36Clを含有するガラス粉末を作製し、コンクリートとFeOから作製した溶融固化体粉末を混合することで、作製することができました。

 


原子力機構の研究所内で発生したコンクリート等の低レベル雑固体廃棄物の一部は、プラズマ溶融することで、化学的に安定な溶融固化体に処理したあと、埋設処分を行う予定です。処分にあたっては、含有する放射性核種の濃度が技術基準を満たしていることを確認しなければなりません。このため私たちは今後、溶融固化体等の廃棄物試料を分析し、放射能データを収集・評価する必要があります。

信頼性の高い放射能データを得るためには、分析操作が適正に実施されているか評価しなければなりません。分析対象となる放射性核種を既知濃度含む標準試料があれば信頼性評価が可能となりますが、廃棄物の標準試料は入手することができません。そこで本研究では、溶融固化体標準試料の作製法について検討を行いました。

溶融固化体に処理される雑固体廃棄物のほとんどはドラム缶に充てんされたコンクリートであることから、原料としてコンクリートと酸化鉄(FeO)を使用しました。また、実際の廃棄物はプラズマ溶融処理施設において処理されますが、本研究ではより簡単な設備でも作製できるように実験室で使用できる電気炉を用いて加熱条件の検討を行いました。

高温において137Cs,14C,36Clなどの揮発しやすい放射性核種は溶融固化体内に留まりにくいという問題点があります。137Csについては、溶融固化体の塩基度(CaOとSiOの濃度比)を低く保つと、ガラス構造が構成されやすくなり、137Csが保持されることが知られています。そこで塩基度を低く保つことで137Csを揮発させずに溶融できることを確認し、図9-6に示す作製方法を確立しました。一方、14Cや36Clについては137Csよりも更に揮発しやすい性質を持つため、同様の作製方法は適用できません。そこで、まず原子炉での熱中性子照射による核反応を利用して14C又は36Clを含有するガラスを少量(1.5 g)作製しました。このガラスを、コンクリートとFeOから作製した溶融固化体粉末と混合することで200 g程度の標準試料を効率良く作製しました(図9-7)。本研究において確立した溶融固化体標準試料の作製方法は、今後本格的に進める廃棄物放射能データの収集・評価に役立てていく予定です。


●参考文献
Ishimori, K. et al., Preparation of Reference Materials on Radiochemical Analysis for Low-Level Radioactive Waste Generated from Japan Atomic Energy Agency, Proceedings of the ASME 13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM2010), Tsukuba, Japan, 2010, ICEM2010-40111, 7p., in CD-ROM.


| | | | |