13-2 指先の被ばく線量評価の信頼性を向上

−光刺激ルミネセンス(OSL)型リングバッジの開発−

図13-3 OSL型リングバッジの構成

図13-3 OSL型リングバッジの構成

OSL型リングバッジは、β線とγ(X)線の分離評価用の2枚のOSL検出素子とβ線の透過を遮る金属フィルタで構成しています。1枚目のOSL検出素子でβ線及びγ(X)線を検出し、2枚目のOSL検出素子でγ(X)線のみを検出することで、分離評価ができるように設計しました。

 

図13-4 β線に対する応答性

図13-4 β線に対する応答性

基準照射試験の結果から、0.88〜2.06 MeVの範囲で±15%未満であることを確認しました。

 

図13-5 γ(X)線に対する応答性

図13-5 γ(X)線に対する応答性

基準照射試験の結果から、48〜1250 keVの範囲で±15%未満であることを確認しました。

原子力施設内における除染作業などでは、作業者の全身の被ばく線量に対して指先の被ばく線量が高くなる場合があるので、指輪状の線量計(リングバッジ)を用いて指先の被ばく線量を測定することがあります。従来、原子力科学研究所においては、熱ルミネセンス線量計(Thermoluminescence dosemeter:TLD)を用いたリングバッジ(従来型)を作業者に着用させて測定してきました。しかし、従来型は、時間とともに測定値が減少するため使用期間が1ヶ月間に限られることや、確認のための繰返し読取りができないことなどの課題を抱えていました。

近年は、光刺激ルミネセンス(Optically Stimulated Luminescence:OSL)現象を利用したOSL線量計が多く使われるようになりました。このOSL線量計は、使用時間に伴う測定値の減少はわずかで長期間の連続使用ができること、繰返し読取りができることなど、一般にTLDよりも利便性が高いことが知られています。その中でも、ナノドットの商品名で販売されている米国LANDAUER社製のOSL検出素子は、小型かつ軽量で耐水性が高いという特徴があります。私たちは、この特徴に着目して、前述の課題を解決するために新たなリングバッジを開発しました(図13 -3)。リングバッジの形状は、性能を確保しつつ着用上の作業性が損なわれない形状としました。

本OSL型リングバッジは、基準照射試験及びシミュレーション計算による検証の結果から、多種類の核種に対してβ線及びγ(X)線を分離して被ばく線量を評価することができ、かつ、放射線のエネルギーに対する応答性、線量直線性などの特性について優れていることを確認しました。例えば、放射線のエネルギーに対するOSL線量計の応答性は、基準となるβ線量及びγ(X)線量に対して±30%以内であることが日本工業規格で要求されており、OSL型リングバッジは、β線量及びγ(X)線量に対して±15%未満であることを確認しました(図13 -4,図13 -5)。また、使用期間は最長3ヶ月間に延びました。

OSL型リングバッジの開発により、確認のための繰返し読取りが可能になり、指先の被ばく線量評価の信頼性が向上しました。このOSL型リングバッジは、既に実用化して除染等作業者の被ばく線量評価に用いており、今後は幅広い放射線作業への活用が期待されます。



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