9-3 高温ガス炉が自ら自然に静定する条件の明確化

−本質的安全高温ガス炉の技術的成立性の検討−

図9-5 過酷な事故時に働く物理現象

図9-5 過酷な事故時に働く物理現象

配管等の破断による冷却材喪失に加え、すべての冷却設備が故障し、更に原子炉内へ大量の空気が侵入するような過酷な事故時において、原子炉内の温度が上昇すると、周辺構造物との温度差が大きくなることで熱伝導,熱放射,大気自然対流により原子炉は自然に冷却されます。空気中の酸素と原子炉内の黒鉛との酸化反応により生成される一酸化炭素は空気中の酸素との反応により二酸化炭素となります。

 

図9-6 過酷な事故時に原子炉が自然に静定する条件

図9-6 過酷な事故時に原子炉が自然に静定する条件

配管等の破断による冷却材喪失に加え、すべての冷却設備が故障し、更に原子炉内へ大量の空気が侵入するような過酷な事故時において、物理現象のみにより燃料温度が制限温度以下に抑制される炉心の出力密度と大きさの範囲や原子炉内の一酸化炭素が爆発下限界未満に抑制でき、かつ、除熱可能な酸化熱量に収まる燃料冷却流路の形状の範囲を明らかにしました。

本質的安全高温ガス炉では、いかなる事故が発生した場合でも、特段の機器・設備に頼ることなく物理現象のみにより原子炉を静定させ、環境に有害な放射性物質を放出させないことを目指しています(図9-5)。本研究では、「燃料被覆材」が有する放射性物質の閉じ込め機能を阻害する事象のうち、崩壊熱と黒鉛等の酸化熱による燃料温度上昇や黒鉛酸化による一酸化炭素生成に焦点を当て、これら事象が物理現象のみで自然に抑制される条件の導出を試みました。

原子炉内の冷却材喪失に加え、すべての冷却設備が故障し、更に原子炉内へ大量の空気が侵入するような過酷な事故を対象に、炉心設計の重要な緒元である炉心寸法や出力密度、燃料冷却流路寸法をパラメータとして、炉心温度や燃料冷却流路での一酸化炭素濃度及び発生する酸化熱量の評価を行いました。その結果、原子炉内の熱伝導、炉容器から周辺構造物への熱放射、大気自然対流などの物理現象のみにより燃料温度が制限温度(1600 ℃)以下に抑制される炉心の出力密度と大きさの範囲を明らかにしました(図9-6)。また、黒鉛酸化により生じる一酸化炭素が空気中の酸素との反応により消費され、二酸化炭素となることで、一酸化炭素濃度を爆発下限界未満(12.5%)に抑制でき、かつ、除熱可能な酸化熱量に収まる範囲が存在することが分かりました(図9-6)。

本研究は、高温ガス炉では、固有の特性を活用することで、原子力エネルギーが潜在的に有する広域災害の発生を排除できる可能性を示しています。

今後、公衆の信頼を得ることができるよう、究極の本質的安全性を有する原子力システムを探求していきます。



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