1-8 可搬型小型α線位置検出器の開発

−固体廃棄物や設備の狭隘部のプルトニウム汚染の直接測定が可能に−

図1-15 開発した可搬型小型α線位置検出器

図1-15 開発した可搬型小型α線位置検出器

 

図1-16 設備の測定の様子

図1-16 設備の測定の様子

 

図1-17 測定したα線のニ次元分布

図1-17 測定したα線のニ次元分布

(a)Pu粒子はスポット様に、(b)ラドン子孫核種は一様に分布しており、両者の弁別ができることが分かります。

 

図1-18 Pu試料とラドン子孫核種捕集ろ紙のエネルギースペクトル(横軸のチャンネルはα線エネルギーに相当する)

図1-18 Pu試料とラドン子孫核種捕集ろ紙のエネルギースペクトル(横軸のチャンネルはα線エネルギーに相当する)

Puは60チャンネル付近まで、ラドン子孫核種はそれ以上のチャンネルに計数がみられ、両者の弁別ができることが分かります。

 


東京電力福島第一原子力発電所の廃炉のような原子力施設の廃止の際には、多種多様ながれきや金属屑、コンクリート等の多量の固体廃棄物が発生します。これら固体廃棄物は処分のため表面汚染の有無を測定する必要がありますが、β、γ線放出核種だけでなく、プルトニウム(Pu)同位体等のα線放出核種の測定も必要となります。α線は空気中の飛程が約4 cm程度と短いため、α線放出核種に対し測定器であるZnS(Ag)サーベイメータをできる限り近づける必要があります。しかし、ZnS(Ag)サーベイメータはその検出器の大きさのため、測定する廃棄物の形状によって測定に限界があり、例えば配管のフランジ部、L字鋼の角など狭隘部の測定は不可能でした。そのため、切断等により測定可能な形状に加工して測定する必要がありますが、切断には多大な労力を必要とするだけでなく、切断そのものが不可能な場合もあります。また測定の際、天然核種であるラドンの子孫核種がα線を放出するため、Pu同位体との弁別が必要となります。

そこで、廃棄物等の狭隘部の直接測定が可能な可搬型小型α線位置検出器の開発を行いました(図1-15)。検出器部は、厚みが10 mg/cm2ZnS(Ag)シンチレータ、ライトガイド、光検出器(シリコンフォトマルチプライヤーアレー:SiPM Array)で構成しました。検出器サイズは26 mm×26 mm×15 mmと、ZnS(Ag)サーベイメータの約5分の1の厚みでした。検出器と接続される可動のアームにより柔軟に測定箇所へアクセスすることが可能になり、狭隘部の直接の測定を可能にしました。図1-16に開発した検出器を用いた設備(バッグイン-バッグアウトポート)の測定の様子を示します。ZnS(Ag)サーベイメータでは不可能であった狭隘部(バッグイン-バッグアウトポートの隙間)の直接の測定が可能であることが分かります。

開発した検出器はラドン子孫核種との弁別を目的とした、α線の二次元分布とエネルギースペクトルの情報が同時に得られます。図1-17に開発した検出器で測定したPu粒子とラドン子孫核種捕集ろ紙のα線の二次元分布を、図1-18にエネルギースペクトルを示します。Pu粒子はスポット様の分布を示し、一方、ラドン子孫核種はPu粒子と異なる一様な分布が確認されました。また、エネルギースペクトルを見ると、異なるチャンネルに計数が確認されているのが分かります。これは、238Puは5.5 MeV、239Puが5.15 MeVのα線エネルギーなのに対し、ラドン子孫核種のうち、主になるポロニウム-214(214Po)は7.7 MeVのα線エネルギーであるためです。これらの結果から、Pu同位体とラドン子孫核種の弁別も可能であることが分かりました。

本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金若手研究(B)(No.15K21618)「峡隘部測定を可能にする可搬型小型α線検出器の開発」の助成を受けて実施されました。



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