6-6 高温ガス炉の炉内の温度を明らかにする

−炉内温度推定に向けた溶融ワイヤによる制御棒温度測定技術の開発−

図6-13 制御棒内の溶融ワイヤ設置場所

図6-13 制御棒内の溶融ワイヤ設置場所

溶融ワイヤは制御棒の最下部のショックアブソーバの中の孔内に装荷します。1本の制御棒には約400〜1000 ℃までに融点を持つ12種類のワイヤを設置しています。

 

図6-14 取り出した溶融ワイヤの外観

図6-14 取り出した溶融ワイヤの外観

融点435 ℃までのワイヤは完全に溶融していますが、651 ℃以上のワイヤは溶融していないことを確認しました。

 


高温ガス炉の設計技術を高度化させるためには、設計上の安全裕度を精査し、適切な裕度を持った設計が可能となるよう、実機の炉内温度を実測し、解析上の不確定要素を減らす必要があります。しかし、炉内温度を測定するには、設置や故障時の交換、超還元性雰囲気特有の腐食等の問題があることから、これまで限られた場所でしか測定できていませんでした。特に、高温工学試験研究炉(HTTR)では、燃料、制御棒被覆管、中間熱交換器の伝熱管の3ヶ所が制限温度に近づくことを懸念していたため実測データが求められていました。この中で特に制御棒は、炉心部で使われる唯一の金属材料であり、定期的に取り外して保守点検を行います。この機会を利用すればセンサの設置や取外しを安価に行えます。そこで、故障の心配がないこと、測定精度が数℃以内と高いことなどを総合的に評価し、融点の異なる合金(溶融ワイヤ)を制御棒の先端に複数設置し、その溶融状態を確認することで、制御棒の供用期間中の最高到達温度を測定することとしました。

先行研究としては、ドイツのぺブルベッド型高温ガス炉(AVR)で炉心部に溶融ワイヤを装荷した例があります。AVRでは、炉内の最高温度を測定するために模擬燃料球に温度モニタを装荷し、炉心に投入しましたが、模擬燃料球の移動経路が確率的に定まることから、数百個もの模擬燃料球が必要でした。一方HTTRでは、炉心の燃料位置があらかじめ定められた位置から変わらず、さらに制御棒の位置も計測しているため、少ない溶融ワイヤで、高い精度の温度測定が可能です(図6-13)。

HTTRの制御棒は、炉心の中心部の温度が高いため、燃料周辺の制御棒から2段階に分けて挿入するシステムを採用しています。今回、第1段階目に挿入する制御棒の中から、最も高温となる制御棒を選定しました。この制御棒には、約400〜1000 ℃までに融点を持つ12種類の溶融ワイヤを装荷しました。それぞれの溶融状態を図6-14に示します。この結果から制御棒の最高到達温度は、505〜651 ℃の範囲であること確認しました。一方解析では約800 ℃と評価していることから、測定値は解析結果よりも低いことを明らかにしました。HTTRの燃料最高温度は工学的不確定因子によって約200 ℃近い裕度が見込まれていましたが、今回の制御棒温度の実測値を活用することで、より合理的な裕度で設計できる見通しを得ました。

今後は他の制御棒の温度測定を行い、炉心の温度分布を明らかにするとともに、燃料温度の評価手法の高度化に生かし、最終的には高温ガス炉設計に関する国際標準化につなげたいと考えます。



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