公開日付: 2025年 7月 2日
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地下深部の未知微生物群の生態を探る
-免疫システムで共生相手を確認-
図1 堆積岩に生きる未知微生物系統群 アルティアルカエウム目(DPANN)の古細菌
図2 アルティアルカエウム目の古細菌において新たに提唱されたクリスパー・キャスシステムの概念図
わが国では高レベル放射性廃棄物を深度300 mより深い地層に処分します。地下深部には豊富な微生物が存在し、地球上の細菌・古細菌の約90 %が陸域地下深部に生息することが明らかになっていますが、その生態系や代謝機能は未解明の部分が多く残されています。地層処分の安全性向上に向けて、地下深部に生息する微生物の働きを知る必要があります。
北海道幌延町の堆積岩地下環境では、二酸化炭素で生きているアルティアルカエウム目に分類される未培養古細菌が、多いところで細菌・古細菌の約90 %もの高い割合を占めています。この種の菌は未だ分離培養に成功しておらず、地下環境における生態は解明されていませんでした。
本研究では、本古細菌種が豊富に存在する幌延と米国のクリスタルガイザーの地下水から微生物を採取し、本種の遺伝情報をメタゲノム解析などで分析調査しました。その結果、本種に共生する菌の存在が明らかになり、本種の免疫システム「クリスパー・キャス」の遺伝子配列から共生菌の必須遺伝子が見つかりました。クリスパー・キャスは、細菌や古細菌が持っているウイルスなどから身を守るための獲得免疫システムです。この古細菌は、クリスパー・キャスを介して敵か味方を判断し、味方になると共生してアミノ酸などの必要な代謝産物を補い合うことで支えあって生きていることが明らかになりました。
ゲノム解析から未培養古細菌の共生メカニズムを解明した本成果は、地下微生物の生態系と物質循環の解明に資するものであり、微生物反応が関わる物質移動を明らかにすることで、地層処分の安全性向上につながることが期待されます。
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