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公開日付: 2025年 5月 15日

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蛍石型酸化物中の酸素の振る舞いを予測する
-酸化物燃料の製造技術と照射挙動解析技術の高度化に向けた研究-

図1 蛍石型酸化物における酸素自己拡散係数のO/M比依存性

図1 蛍石型酸化物における酸素自己拡散係数のO/M比依存性

蛍石型酸化物において、O/M比が2.00よりも大きい場合は、格子間酸素が形成された酸素過剰状態であり、O/M比が2.00よりも小さい場合は、酸素空孔が形成された酸素欠損状態です。UO2及びU0.7Pu0.3O2は酸素過剰と酸素欠損の両状態をとることができますが、CeO2及びPuO2は酸素欠損状態のみをとります。このことから、CeO2及びPuO2はO/M比が2.00よりも小さい領域にのみデータがあり、UO2及びU0.7Pu0.3O2はどちらの領域にもデータがあります。

二酸化ウラン(UO2)や二酸化プルトニウム(PuO2)は軽水炉や高速炉において燃料として使用されていますが、その構成元素の拡散は、酸化・還元、焼結、照射中の元素移動といった燃料を製造し使用する上で把握すべき重要な現象と密接に関係しています。このうち、酸素の拡散は、上述の現象に加えて燃料の酸素ポテンシャルや欠陥濃度等の基礎物性にも関与します。このことから、本研究では酸化物燃料の酸化・還元に関わる酸素の拡散に着目し、蛍石型結晶構造を有するUO2、PuO2、二酸化セリウム(CeO2)及び(U, Pu)O2の酸素拡散係数の実験データを酸素欠陥の濃度と移動エネルギーに関連付けて解析しました。その結果、蛍石型酸化物における酸素拡散係数と酸素欠陥濃度の関係を定式化することができました。

図1にUO2、PuO2、CeO2及びU0.7Pu0.3O2の酸素自己拡散係数と酸素-金属原子数比(O/M比)*の関係を示します。いずれの物質でも酸素自己拡散係数は、定比組成(O/M比=2.00)に近づくにつれて減少することが分かります。また、UO2とU0.7Pu0.3O2は、定比組成近傍で酸素自己拡散係数が最小となりますが、その両側の組成では酸素拡散係数に大きな差があることが分かります。これらの結果から酸化物燃料における酸素自己拡散係数のO/M比依存性を定量的に把握できますので、燃料製造時の酸化・還元速度や照射時の燃料中での酸素挙動の予測などを高精度に行うことが可能となります。

* 酸素欠陥濃度とO/M比
結晶中の酸素点欠陥のサイト分率は、酸素の欠陥濃度として定義されます。この欠陥濃度は、O/M比から計算できる定比組成からのずれと直接関係しています。そのため、本文中で示されている酸素自己拡散係数とO/M比の関係は、酸素自己拡散係数と酸素欠陥濃度の関係として解釈することができます。
著者情報
参考文献
Kato, M., Watanabe, M. et al., Oxygen Diffusion in the Fluorite-Type Oxides CeO2, ThO2, UO2, PuO2, and (U, Pu)O2, Frontiers in Nuclear Engineering, vol.1, 2023, 1081473, 10p.
外部論文: https://doi.org/10.3389/fnuen.2022.1081473

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