公開日付: 2025年 6月 5日
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地震時の確率論的なリスクを現実的に評価する新手法の開発と次世代炉への適用
-原子炉容器の座屈後変形挙動を考慮した地震時疲労破損確率の評価-
図1 原子炉容器全体を対象とした有限要素法を用いた構造解析及びズーミング解析
図2 破損確率
これまでの高速炉の地震時確率論的リスク評価(PRA)研究では、弾性変形範囲で設計されていることを基本として、安全上重要な機器である原子炉容器(RV)について、座屈を破損と判定していました。このため、座屈から実際の破損に至るまでの裕度を無視していることから、RV破損が現実よりも厳しく評価され、それに伴うRV液位確保失敗が炉心損傷頻度に支配的でした。本研究では、座屈変形に伴うRV固有周期の変化によっては、すぐには崩壊や破断に至らず、地震波に起因する繰り返しの変形による疲労によって破損する場合があることに着目し、座屈後のRV変形挙動を考慮した地震時のRV破損確率評価手法を開発しました。
本手法では、細かなメッシュを切ったRV全体をモデル化し、有限要素法を用いた構造解析によって、設計基準地震動の数倍の入力地震動に対するRVの変形、ひずみなどを計算します(図1(a))。次に、疲労破損が生じる可能性がある局所ひずみの大きい領域を選定し(図1(b))、更に細かなメッシュ分割によるズーミング解析を実施します(図1(c))。解析で得られたひずみ履歴を基に疲労損傷係数を計算し、これを複数の入力地震動に対して繰り返すことでRVが疲労破損する地震動を求めます。そして、評価上の不確実さを考慮することで座屈後の疲労破損確率を地震動の関数として算出します。
本手法を一例としてループ型の次世代高速炉のRVへ適用した結果、座屈を破損とみなす従来の破損確率と比べて、座屈後の疲労破損確率は有意に低減しました(図2)。
RV全体を考えたとき、疲労破損以外の破損が生じる可能性も考える必要がありますが、それは今後の課題となります。
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