JAEA R&D Navigator
トップページ > 高速炉研究開発 > ナトリウム冷却高速炉の自己作動型炉停止機構(SASS)の実装に向けて

公開日付: 2025年 5月 8日

アクセスカウント:0

categ2

ナトリウム冷却高速炉の自己作動型炉停止機構(SASS)の実装に向けて
-温度感知合金部周囲の流れの把握-

図1 (a)概略図と開発課題、(b)水試験装置、(c)CPEM周辺の流動場、(d)CPEMフィン間流速

図1 (a)概略図と開発課題、(b)水試験装置、(c)CPEM周辺の流動場、(d)CPEMフィン間流速

(c)に示すCPEM周辺では、フローコレクタの縁近傍の流れが遅く、剥離流れが生じること、(d)に示すCPEMフィン間流速の計測結果から、フィン間流速はz方向位置(流れ方向位置)が下流側になるほど小さくなることが分かりました。

次世代のナトリウム冷却高速炉では、事故時に原子炉を安全に停止させる受動的炉停止システムとして、自己作動型炉停止機構(SASS)の採用が検討されています。SASSは、事故時等の冷却材温度の異常上昇を温度感知合金(CPEM)*1が感知し、制御棒の保持力を失うことで、炉心上部で保持されていた制御棒が炉心に自重で自動的に挿入される機構です*2。このCPEMは、温度応答性を向上させるためフィン部を有する複雑な形状を持ちますが、SASSの有効性を評価するためには、フィン間を含むCPEM周囲の冷却材の流れを精度良く把握することが重要です。そこで、本研究では、炉心出口からCPEMまで(図1(a))を詳細に模擬した実物大の水試験装置(図1(b))を製作し、これまで計測されていなかった実寸かつ実機流速に近い条件でのフィン間を含むCPEM周辺の流動場の計測を実施しました。

CPEM周辺のレーザーを用いた流動場計測結果(図1(c))では、フローコレクタ*3近傍の剥離流れにより、CPEM周辺の流速が大きくなる等の流動特性を把握しました。また、CPEMフィン間の隙間部の流速を直接計測した結果(図1(d))から、フィン間流速はCPEM上流と比較して大きく、下流側ほどフィン間流速が減少する傾向となることを明らかにし、これまで精度良い流動場の計測が困難であったフィン間の流動特性を把握しました。今後は、本研究結果を用いてSASSの有効性を示すための解析評価手法の妥当性を確認し、SASSの実装につなげていきます。

*1 温度感知合金は、周囲の温度がキュリー点(約660 ℃)に到達すると磁性を失う電磁石。
*2 自己作動型炉停止機構は、通常運転時に温度感知合金部を持つ電磁石により制御棒を保持し、冷却材の温度上昇による電磁石の磁性消失を利用し、事故時にのみ制御棒を自動的に挿入する機構。
*3 フローコレクタは、炉心出口の高温冷却材を効率良く温度感知合金に導くために温度感知合金周囲に設置されている構造物(図1(a)参照)。

著者情報
参考文献
Yamasaki, R. et al., Study on Performance Evaluation of Self-Actuated Shutdown System for Sodium-Cooled Fast Reactor; Flow Field Measurement Around a Curie Point Electromagnet, Proceedings of 13th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS13), Seoul, Korea, 2024, 1182, 7p.

このページへのご意見やご感想などありましたらボタンをクリックしてご意見ご感想をお寄せ下さい。

トップへ戻る