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公開日付: 2025年 4月 22日

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高精度実験でエキゾチックハドロンの姿に迫る
-真に「尖った」ピークの存在を証明-

図1 カスプ(下)と通常のピーク(上)の比較

図1 カスプ(下)と通常のピーク(上)の比較

通常のピークでは極大点で微分が0になりますが、カスプの場合、微分が正の無限大から負の無限大に移り変わることで極大点を作ります。

図2 Belle実験で得られたカスプ

図2 Belle実験で得られたカスプ

という粒子が陽子、K中間子、π中間子の三つの粒子に壊れた際の陽子とK中間子の不変質量スペクトルです。ピークの形を詳細に調べた結果、このピークが真に「尖って」いることを証明できました。


原子核という極微の世界をさらに細かく見ていくと、構成要素の陽子や中性子にたどり着きます。この陽子や中性子の仲間はハドロンと呼ばれ、クォーク2個または3個からできていると考えるクォーク模型で説明されてきました。

しかし、それではうまく説明できない「エキゾチックハドロン」が近年、数多く発見されています。その有力な説明の一つは、2個の軽いハドロンが緩く結び付いて束縛系を作るというものですが、試行錯誤の末分かったのは、2個のハドロンがぎりぎり束縛しない場合でも束縛したのと似たような信号が見える、というものでした。つまり、質量スペクトルにピークのような構造ができるのですが、普通のピークとは大きく異なる点が一つあります。普通のピークはどんなに細くても「頭が丸い」形、数学的には極大点で微分が0になる一方、ぎりぎり束縛しない場合では極大点の微分は無限大(正の無限大から負の無限大にジャンプして極大点を作る)となり、尖った形(英語で「カスプ」)となることです。理論的に長年予言されてきましたが、実際の実験では質量分解能が有限なためこれまで尖っていることを同定できませんでした。

私たちは、多くの研究者が参加した素粒子の国際共同実験「Belle実験」の高統計かつ高分解能のデータを用いて、尖った形のピークが存在することの実証に成功しました。

謝辞

本研究は、JSPS科研費(JP21H04478)の助成を受けたものです。

著者情報
参考文献
Yang, S. B., Tanida, K. et al., Observation of a Threshold Cusp at the Threshold in the Mass Spectrum with Decays, Physical Review D, vol.108, issue 3, 2023, L031104, 6p.
外部論文: https://doi.org/10.1103/PhysRevD.108.L031104

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