公開日付: 2025年 4月 22日
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ハイパー核の寿命を測定
-100億分の2秒の世界に迫る-
図1 ハイパー核の存在時間の分布
横軸の単位ns(ナノセカンド)は10億分の1秒を表し、縦軸の単位ps(ピコセカンド)は1兆分の1秒を表します。値が負になっているところにもイベントがあるのは、時間の測定精度(100億分の1.23秒)によります。それも考慮してデータをフィットした結果が実線で示されています。
通常の原子核は陽子と中性子からできていますが、それら以外にストレンジクォークを持つ Λ(ラムダ)、Ξ(グザイ)等の重粒子(バリオン)を含むような特殊な原子核をハイパー核と呼びます。ハイパー核は天然には存在せず、加速器を使って人工的に作り出しますが、すぐに壊れてしまいます。どれくらいすぐかというと、わずか100億分の2秒です。この存在時間を正確に測ることができれば、ハイパー核の性質や崩壊を引き起こす弱い核力についていろいろなことが分かります。
私たちはJ-PARCが誇る大強度K中間子ビームを使って、このわずかな時間を精密に測ることに成功しました。まず、ハイパー核が生成された時刻は、標的直前に置いた検出器をビームが通った時刻とビームの速度から計算します。次に、ハイパー核が崩壊するときに放出する粒子を外側の検出器で捕まえて、その通過時刻と粒子の速度から崩壊が起きた時刻を計算します。その差がハイパー核の存在時間ということになるわけです。私たちの実験では、この時間を100億分の1.23秒という高い精度で測っています。さらにハイパー核をたくさん作って平均を取ることで、系統誤差まで含めても、平均寿命の不確かさは1兆分の14秒まで小さくできました。
本研究は、JSPS科研費(JP21H00129)の助成を受けたものです。
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