公開日付: 2025年 4月 30日
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硬くてもろい放射線遮蔽ガラスが持つ流体的挙動
-微小押込み試験による機械的特性評価技術の脆性材料への適用-
図1 (a)微小押込み試験結果からの機械的特性評価と(b)き裂先端部での塑性領域限界値
J-PARCの物質・生命科学実験施設に設置されている中性子発生用水銀標的容器の寿命に影響を与える因子として、陽子及び中性子による照射損傷があり、容器材料の機械的特性の変化を定量的に評価することは極めて重要です。これまでに、延性材料等の微小押込み試験結果に対して、有限要素法を援用した逆解析を行うことにより、引張試験結果と同様な機械的特性を定量的に評価する手法を考案しました。
一方、高放射化機器の廃棄が課題となっています。減容化技術の一つとして、放射線遮蔽ガラス窓の外側からのレーザー加工が考えられます。その場合、レーザー照射によるガラスの機械的特性の変化を把握することが重要です。
本研究では、脆性材料である放射線遮蔽ガラスに微小押込み試験による評価手法を適用しました。評価対象は、鉛含有量が異なる3種類のガラスと高出力Nd:YAGレーザーが照射された鉛ガラスです。鉛含有量の増加及び照射により、流動応力(直線が折れ曲がった位置での真応力)が低下しました(図1(a)右)。さらに、液体的挙動を表す微小塑性流動に着目することにより、き裂発生時におけるき裂先端部での塑性領域の差異を確認でき、照射による損傷(脆性的特性への変化)を定量的に評価可能であることが改めて示されました(図1(b))。今後、照射により脆化する使用済み標的容器に本手法を適用し、照射損傷による寿命評価を行う予定です。
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