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公開日付: 2025年 4月 23日

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溶液中のトリチウム濃度を迅速に把握する
-連続測定を可能とした実用的なトリチウムモニターの開発-

図1 (a)液体シンチレーションカウンター(LSC)による測定(従来法)、(b)トリチウムモニターによる測定(新規開発)

図1 (a)液体シンチレーションカウンター(LSC)による測定(従来法)、(b)トリチウムモニターによる測定(新規開発)

(a)は従来の測定で用いられる液体シンチレーションカウンター(LSC)での測定フロー、(b)は開発したトリチウムモニターによる測定フローです。トリチウムモニターは、既存LSCをベースに検出部を新設計し、固体シンチレーターを採用することで煩雑な測定前処理工程を省くことが可能になりました。

図2 トリチウムモニターの検出下限値

図2 トリチウムモニターの検出下限値

トリチウムモニターによって測定した際の測定時間と検出下限値の解析結果です。トリチウムモニターにより従来法より短時間で目標値を達成する性能を発揮できることが分かりました。

東京電力福島第一原子力発電所(1F)の廃止措置の一環として、2023年からALPS処理水の海洋放出が開始されました。ALPS処理水中のトリチウム濃度が規制指標である1,500 Bq L-1を超過していないかを確認するために継続的なモニタリングが必要となります。トリチウム測定の従来法である液体シンチレーションカウンター(LSC)による測定法は、測定の前処理工程に時間を要する、シンチレーターに有機溶媒を使用するため廃液が出るなどモニターとしての運用には課題がありました。そこで、私たちはALPS処理水中のトリチウム濃度を継続的に監視するためにトリチウムモニターを開発しました。このモニターは、プラスチックシンチレーション(PS)ペレットから成るフローセル検出器、三つの光電子増倍管による同時計数回路、環境ガンマ線の影響を低減するための鉛遮蔽体やVETO検出器を内蔵しています。PS製の固体シンチレーターを採用したことで、前処理工程を必要としない、かつ有機廃液を出さずに測定が可能な検出器を開発しました。また、1Fのような比較的高いバックグラウンド(BG)線量率の環境を考慮した遮蔽構造やBG減算機能を付加することで、低BG(0.082 cps)を実現しました。

本装置はポンプにより通水することで連続測定可能な装置と設計されているが、今回の試験では煩雑な前処理工程を必要とせずに1時間という短時間の測定で593 Bq L-1の検出下限値を達成し、ALPS処理水の放出基準である1,500 Bq L-1を十分下回っていることを確認しました。

著者情報
参考文献
Sanada, Y., Abe, T. et al., Development of a Practical Tritiated Water Monitor to Supervise the Discharge of Treated Water from Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant, Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A, vol.1062, 2024, 169208, 7p.
外部論文: https://doi.org/10.1016/j.nima.2024.169208

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