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公開日付: 2025年 10月 30日

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3Dプリント技術がもたらす原子炉燃料の新しい機能性
-多様な革新炉燃料を製造できる実用技術を目指して-

図1 SiC/黒鉛製傾斜積層造形体の破断面

図1 SiC/黒鉛製傾斜積層造形体の破断面

中性子照射下で寸法が変化する黒鉛と、その一方で安定なSiCの配合比率を5段階に変化させながら、厚さ10 µmの積層を繰り返して造形することに成功しました。

原子力機構では、三次元積層造形(3Dプリント)技術の光造形法を用いて、次世代型革新炉の高速炉や高温ガス炉等の多様なセラミックス原子燃料を製造する実用技術を研究開発しています。

例えば、高速炉の混合酸化物(MOX)燃料ペレットの中に、長期的に高い放射能を持つマイナーアクチノイド(MA)の粒子を3Dプリント技術により埋め込み製造できれば、高速炉でMAを安全に効率的に消滅処理できるようになります。また、高温ガス炉は中性子減速材の黒鉛の中にTRISO被覆燃料粒子*を規則的に分散配置して燃料温度を原子炉取出し温度(950 ℃)程度にまで下げられる形状にしながら、高温下で耐酸化性に優れる炭化ケイ素(SiC)で黒鉛の表面を覆った炉心酸化事故耐性燃料(ATF)を製造できるようにもなります。

このたび、中性子照射下で黒鉛とSiCが剥がれにくい傾斜材料を、3Dプリンターを用いて積層造形することに成功し(図1)、黒鉛にSiCの高温耐酸化性能を付与する新しい製法としての可能性を示しました。

こうした従来にない機能性を付加した新しい原子燃料を創造するポテンシャルを持つ3Dプリント技術は、両革新炉型に共通の新しい燃料製法のキーテクノロジーとして期待されています。

* TRISO被覆燃料粒子:二酸化ウラン(UO2)などの核燃料球を4層の等方性セラミックスで被覆し、三重構造隔壁層(TRISOはTri-structural Isotropicの略)と緩衝層で核分裂生成物を閉じ込める、直径1 mm程度の粒子状の高温ガス炉燃料。
著者情報
参考文献
Ueta, S. et al., Experimental Additive Manufacturing of Green Body of SiC/Graphite Functionally Graded Materials by Stereolithography, International Journal of Applied Ceramic Technology, vol.20, issue 1, 2023, p.261–265.
外部論文: https://doi.org/10.1111/ijac.14190

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